今からでも遅くない? 年収200万円と800万円の分かれ道:金曜インタビュー劇場(藤原和博さん)(4/5 ページ)
サラリーマンの給料が減っていく――。このような話を聞くと、不安を感じる人も多いのでは。人口減少などの影響を受け、大幅な経済成長が見込めない中で、私たちはどのように仕事をしていけばいいのか。リクルートでフェローとして活躍された藤原和博さんに聞いた。
希少性と掛け算の関係
藤原: タクシードライバーの年収は減ってきているかもしれませんが、英語を話せる人は話せないドライバーより稼ぐことができるはずです。日常会話ができるだけだったら、それほどの価値はないでしょう。では、英語が堪能で古都の歴史に詳しい人はどうでしょうか。「英語」と「歴史」をタクシーに掛け算して勝負するんです。京都の金閣寺や奈良の大仏について、英語で案内できる人ってあまりいませんよね。
土肥: 日本語で説明するのも難しい……。
藤原: 英語がちょっとしゃべれるくらいでは希少性が出ない。だから、古都の歴史を学ぶことで、希少性が生まれるんです。希少性を高めるためには、こんなふうに“掛け算”していかなければいけないんです。
土肥: 希少性と掛け算の関係について、もうちょっと話を聞かせていただけますか?
藤原: オリンピックのメダリストになるのには、100万人に1人くらいの確率です。その100万人の中でたった1人の存在になれば、年収1000万円以上どころか、人によっては億単位で稼ぐことができるでしょう。100万人に1人の存在にいきなりなるのは難しいですが、まず、100人の中で1人になるのはそれほど難しくありません。
100人の中で1人の存在になるには、1万時間くらいあればなれると言われています。1日6時間その仕事に集中すると、だいたい5年で1万時間になる。1日3時間でも10年でその仕事をマスターできるでしょう。そうして100人に1人になることができれば、次はそれに近い別の分野で、100人の中の1人を目指す。例えば、20代で営業で100人に1人の存在になって、次の30代で販売分野で100人に1人の存在になると、100分の1×100分の1で、1万人に1人の存在になることができる。掛け算の妙ですね。
ファーストリテイリングの柳井正さんや、ソフトバンクの孫正義さんのような天才レベルを目指したければ、挑戦してみてもいいでしょう。ただ、お2人には1000万人に1人……いや、1億人に1人くらいの希少性がある。ですから、多くの読者にはハードルが高すぎます。まずは100人に1人の存在を目指し、それを別の分野で繰り返し、掛け算で勝負するほうがいいのではないでしょうか。
土肥: ふむふむ。
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