「こだわりの○○」という言葉を使う店は、何もこだわっていない(絶対に):新連載・こだわりバカ(4/4 ページ)
街中に「こだわり」という言葉があふれている。「こだわりラーメン」「こだわり旅行」「こだわり葬儀」など。このようなこだわりのない使われ方に、コピーライターの川上徹也氏が燃えている。こだわりの原稿を読んでみたところ……。
ある女性ライターから聞いた話だが、彼女が原稿を書いているある女性誌は編集長から店の紹介記事に「こだわりという言葉禁止」という命が下ったという。ライターの彼女は「長い文章だったらまだしも数行の紹介で『こだわり』という言葉が使えないととても大変なんですよ」とこぼしていた。
確かにそうかもしれない。それでもプロの書き手であればそんな「決まり文句=空気コピー」をぐっと我慢して、頭にいっぱい汗を書いて別の表現で文章を書くようにするという誇りが必要だ。
じゃあ、具体的にそれはどう書けばいいんだって? それは次回に詳しく。
ということで、これからお店の紹介を書く人は、こだわりは禁止。分かった?
そう言いながら、この原稿に「こだわり」という言葉を書きすぎた。いったい何回「こだわり」という言葉を書いただろう。「お前が一番“こだわりバカ”なんじゃないの?」という声が聞こえてきそうだ。数にこだわりがある人は、ぜひ数えてみてほしい。
プロフィール:川上徹也(コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表):
大阪大学卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。
「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリー・ブランディング」という言葉を産み出した第一人者としても知られている。現在は広告にとどまらず、「言葉」を変えることで、企業団体・社会・制度などを輝かせる仕事に取り組んでいる。
著書は、シリーズ累計11万部突破の『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)など多数。 最新刊『あなたの弱みを売りなさい』(ディスカヴァー21)好評発売中。
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