外国人観光客は増えているのに、日本が「テーマパーク戦争」に勝てないワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
東アジアの「テーマパーク戦争」が激しさ増している。中国や韓国などで巨大施設が相次いで誕生する中、日本はどうやって戦っていくのか。勝ち目は……。
アンデルセン公園が高評価のワケ
国土交通省「諸外国における公園の現況」(2012)をもとにした東京都のデータによると、東京の1人当りの公園面積は5.8平方メートル。ロンドン(26.9平方メートル)、ニューヨーク(18.6平方メートル)、パリ(11.6平方メートル)という先進国の主要都市と比較しても際立って少ない。都心近郊の千葉、神奈川なども似たようなものだ。
こういう国で子を持つ親にとって、アンデルセン公園のようなスポットがいかに貴重な場所かというのは説明する必要もないだろう。つまり、アジア10位、日本3位という評価は、「ワオ、豪華じゃないけど素朴でゆったりとした公園だね」なんて言って国内外の観光客やらが押しかけるからではなく、東京都心という公園が絶望的に少ない地で、わが子を日が沈むまで公園でのびのび遊ばせてやりたいという親たちの切実なニーズに応えていているからだ。
それを象徴するのが、「アンデルセン渋滞」だ。
今年5月にランキングが発表されるやいなや、アンデルセン公園へ向かう道には、東京、千葉、茨城、神奈川など近隣ナンバーのクルマがわっと押し寄せ、近所の住人などが「アンデルセン渋滞」などと揶揄(やゆ)するほどすさまじい交通渋滞が発生しているのだ。アンデルセン公園に行くために近くを走る北総線が外国人観光客だらけになったなんて話がでていないところをみると、やはりほとんどは情報番組を見た関東のファミリー層なのだ。
なんてことを言うと、「公園不足」という追い風があるにしても、アジアで10位、日本で3位というずば抜けた評価を得たというのは揺るぎない事実なんだからやはりアンデルセン公園はなにか特別な「強み」があるのだと考える人もいるかもしれない。実際、『ハーバード・ビジネス・オンライン』なんかでは人気の秘密を『公益法人ゆえの制限が、ストレスフリーな職場環境』として、TDLと同じく『“誰もが幸せになれる”経営の形が形成されている』と褒めちぎっている。
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