「テロへの報復は暴力しか生まない」という主張は、“正しい”のか:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
フランスで起きた同時多発テロを受けて、「暴力が生み出すのは暴力のみ」といった声が出る一方で、「いや、暴力に対しては暴力しかない」という意見も出ている。果たして、どちらの主張が“正しい”のか。
テロリストの標的が一般市民に
このテロリズム・インデックスには、最近のテロの特徴として興味深いデータが示されている。テロのターゲットである。テロリストの標的が以前ような宗教関係者などから、一般市民に移ってきているのだ。2000年には2000人以下だった民間人の死者数は2014年に1万5380人に達している。ちなみにこの数は2013年から172%も増加している。
報告書に書かれているのは、テロとの戦いを正義と考える欧米諸国にとっては見たくない数字のオンパレードである。激増しているのは死者数だけでない。経済的な損失でも莫大な数字がはじき出されている。2000年に49億ドル(6034億円)だったテロ被害の経済損失は、2014年に史上最高額となる529億ドル(6兆5139億円)ほどになった。ただもちろん、テロの被害額を正確に出すのは難しい。というのも、犠牲者と建物の破壊など直接的な損失のほかに、間接的な損失もあるからだ。それでも急増していることだけは間違いない。
また、世界各国が国内のテロ対策に費やしている予算の総額は、2014年だけで、およそ1170億ドル(14兆4070億円)に達すると試算されている。米国だけで見ると、2001年から2014年までに治安機関が対テロ対策として使った金額は、1.1兆ドル(135兆4512億円)。年平均730億ドル(8兆9890億円)を費やしていることになる。
余談だが、報告書によれば、2014年に急激にテロ犠牲者が増えた国はナイジェリアだ。これは、イスラム過激派組織ボコ・ハラムが活動を活発化させていることを意味する。死者数を見る限り、現在、世界で最も危険なテロ組織はイスラム国でもアルカイダでもなく、ボコ・ハラムである。ボコ・ハラムは2014年、テロによって6644人を殺害、一方のイスラム国は6073人だった。
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