100年以上変わらなかった「タイムレコーダー」が、新しいビジネスを生む日:新連載・で、どうやって儲けるの?(3/3 ページ)
タイムレコーダーは100年以上前に開発されたのに、基本的な機能は同じ。出退勤の時間を記録するだけ。長く変わらなかった市場に、新しいビジネスが生まれようとしている。それは……。
タイムレコーダーの役割
さて、気になる価格は従業員10人当たり1万800円(税込、iPad1台で利用できるのは300人まで)。人数が増えれば料金は上昇するわけだが、なんせ“ぽっきり価格”である。導入後のメンテナンス代などは発生しないのに、このタイムレコーダービジネスを軌道に乗せることができるのだろうか。
「先ほども申し上げましたが、カードを入れて時間を記録するタイプのモノでも、年間10万台も売れているんですよ。その市場の10%でも取れることができれば、従業員30人ほどの当社でも十分にやっていけます」とのこと。
記者がこのタブレット タイムレコーダーに注目しているのは、今後のことである。会社の人間が最も通る場所に置いているので、アイデア次第で新ビジネスが生まれそうな予感がプンプン漂うのだ。例えば、カメラを搭載しているので警備会社とタッグを組めば防犯機能の役割を果たすことができる。自動販売機の中に設置すれば、出勤時に“ついで買い”の需要が生まれるかもしれない。とまあこんな感じで、これまでタイムレコーダーは空気のような存在だったかもしれないが、これからはなくてはならない存在になるかもしれないのだ。
取材の最後に、駒井CEOはタイムレコーダーと働き方の関係に触れた。「その昔、日本の企業は従業員に『長く働け、長く働け』と言っていたのに、今は『早く帰れ、早く帰れ』と言っていますよね。でも、言うほうも言われるほうも、あまり気持ちのいいものではないですよね。自分のことは自分で管理する――そうした環境になれば、みんなが気持ちよく働くことができるようになるのではないでしょうか。自己管理が求められる時代になれば、タイムレコーダーの役割は今とはかなり違っているでしょうね」
著者の連載が本になりました!:
連載「仕事をしたら○○が見えてきた」が、『ササる戦略』(三才ブックス)というタイトルで書籍化されました。「『丸亀製麺』の讃岐うどんが海外で受け入れられた理由は?」「アイスの『ピノ』が40年も売れ続けているのはなぜ?」など、業界が注目する12社から“ヒットの法則”を紹介しています。
「読んでいくと、やはり経営には『工夫』が必要。各企業のこれまでの苦労を思えば、1300円(税別)は安い」(ビジネスブックマラソン)、「実際の展開をしている担当の人だからこそ伝えられるノウハウが満載な本書は、マーケティング活動に悩みを抱えるビジネスパーソンに生きた知恵を与えてくれるだろう」(flier)といった声が届いています。
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