なぜ大学のポスターは「世界にはばたき」「未来を拓く」ばかりなのか:こだわりバカ(6/6 ページ)
「ここに集い、世界に旅立つ」「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」――。大学のスローガンは、なぜ手垢がついた表現ばかりなのか。自称「大学コピーコレクター」の川上徹也氏が分析したところ……。
大学のスローガンを強い言葉にした
前述した大学のスローガンで考えてみよう。
「世界」という陳腐な言葉であっても、言葉の組み合わせ次第では少しは引っ掛かりのある「強い言葉」になる可能性はある。例えば、一般的に「大学」は「学ぶ」場所であるから、その反対語の「遊ぶ」という言葉を組み合わせてみる。
世界で遊ぶ人、募集。○○大学
どうだろう? 「世界にはばたく」よりは、少しは引っ掛かりのあるフレーズになったのではないだろうか?
(3)圧縮して言い切る
言葉は、短く圧縮して言い切ったほうが強くなる。例えば、ドラマなどで主人公の強烈なキャラクターを表現するために、圧縮して言い切るセリフが使われることが多い。
2005年に原作の漫画がドラマ化された『ドラゴン桜』では、阿部寛さん演じる主人公・桜木建二が言い切る強いセリフを連発した。中でも第一話のタイトルにもなっている桜木のセリフ「バカとブスこそ、東大へ行け!」は非常に印象に残る強いフレーズだった。
本来の意味合いとしては、「とりえや才能がなかったり、やりたいことが見つかってないからこそ東大に入っておくべきだ。あとから何かしたいと思った時に就職にも有利だしいろいろな可能性が高まる」ということだろう。それを短く圧縮して言い切ったからこそ、ストーリーを象徴するような強いセリフになっているのだ。
これを真似て、以下のようなキャッチコピーが書かれた大学ポスターがあったら、とりあえず目をとめて内容を見てしまうと思うのだが、どうだろう?
バカとブスこそ、うちへ来い。○○大学
プロフィール:川上徹也(コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表):
大阪大学卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。
「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリー・ブランディング」という言葉を産み出した第一人者としても知られている。現在は広告にとどまらず、「言葉」を変えることで、企業団体・社会・制度などを輝かせる仕事に取り組んでいる。
著書は、シリーズ累計11万部突破の『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)など多数。 最新刊『あなたの弱みを売りなさい』(ディスカヴァー21)好評発売中。
関連記事
- 「こだわりの○○」という言葉を使う店は、何もこだわっていない(絶対に)
街中に「こだわり」という言葉があふれている。「こだわりラーメン」「こだわり旅行」「こだわり葬儀」など。このようなこだわりのない使われ方に、コピーライターの川上徹也氏が燃えている。こだわりの原稿を読んでみたところ……。 - “納豆不毛地帯”の大阪で、なぜ小さな店の納豆がヒットしたのか
「関西人は納豆が嫌い」と言われている中で、大阪の東部にある大東市で注目されている納豆メーカーがある。その名は「小金屋食品」。従業員数が10人も満たない小さな会社が、なぜウケているのだろうか。 - 最初は売れなかった? これまで語られなかった「じゃがりこ」の裏話
「じゃがりこ」といえば、カリカリ・サクサクした独特の食感が特徴だ。カルビーが1995年に発売して以来、ロングセラー商品となっているが、開発秘話はあまり知られていない。開発に携わった担当者が多くを語らなかったからだが、18年経った今、当時の裏話を打ち明けてくれた。 - ジャポニカ学習帳の表紙から「昆虫」が消えた、本当の理由
ジャポニカ学習帳の表紙といえば、「昆虫」の写真を思い浮かべる人も多いだろうが、数年前に昆虫が消えた。教師や保護者から「昆虫が気持ち悪いから変えてほしい」といった要望があって、発売元のショウワノートが削除したというが、本当にそうなのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.