過去最高の売上! 米国人が銃を“爆買い”するワケ:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
2015年11月27日の金曜日、米国では恒例の「ブラックフライデー」が盛り上がった。この日からクリスマス・年末商戦がスタートしたわけだが、今年はある商品が過去最高の売り上げを記録した。銃である。
負のスパイラルより悪ノリの域に
結局、売り上げの数字が示しているように、国民はさらに銃を購入して武装することで、自己防衛(自己満足とも言うが)しようとすることになる。まさに負のスパイラルである。
先日、米国でそれを証明するかのようなニュースが報じられた。2016年1月に、銃をショッピングチャンネルで買えるようにする「Gun TV(銃TV)」が開始されるというのだ。
このチャンネルは米TVショッピング界の大物2人が始めるようだが、彼らにしてみれば、無差別銃撃事件がどれだけ増えようが関係ないということだろう。銃の需要がかつてないほど高まっている今こそ、これまで以上にお手軽に銃を手に入れてもらおうということらしい。しかも家のリビングルームで酒でも飲んでくつろぎながら、電話一本で自動小銃をオーダーできるとは新しいビジネスアイデアだ――とまで思ったかどうかは分からないが、そういうコンセプトだろうことは想像が付く。
ここまでくるともはや負のスパイラルというより悪ノリの域に達していると言えるが、米国のこの銃文化は、国民が銃を持たない他国から見るとなかなか理解しづらい。
これまでいろいろな米国人と銃の問題について話をしてきたが、やはり彼らには自分のことは自分で守るという“精神”があるように感じる。中には、銃犯罪から身を守るには、銃で備えるしかなく、その元をたどれば、国の成り立ちにまでさかのぼると主張した人もいる。要は、ピルグリム(巡礼者)や入植者らがアメリカ新大陸に移住し、自分の身は自分で守らなくてはいけないという環境で開拓を行った。当時彼らを守るような国や組織は存在しなかったし、強盗や獣から身を守る必要もあった、と。これは銃文化に詳しい米ニューヨーク州立大学の政治学教授であるロバート・スピッツァー氏も同じことを言っている。
そしてそれが結局、米国人文化の1つになったということらしい(もちろん銃を持たない主義の米国人も大勢いて、一緒にされたくないと言う人もいる)。こうしたことを踏まえると米国の銃文化を制限することは簡単ではないというのがわかる。ちなみに銃所有者の多数派は、統計から見ると地方の田舎地域に住んでいる白人で、支持政党は共和党が49%、民主党は22%だ(参照リンク)。保守的な米国人ほど銃を支持する傾向がある。
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