「中年フリーターが増えると日本は危ない」は本当か:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
メディアが「中年フリーター」が増えていることに警鐘を鳴らしている。2000年代に入ってから増え始め、2015年には273万人に達しているそうだ。しかし、筆者の窪田氏は「中年フリーター」という言葉から、スピンコントロールの要素を強く感じるという。その理由は……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
最近、メディアが「中年フリーター」が増えているということにこぞって警鐘を鳴らしている。
総務省の「労働力調査」を基に三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾畠未輝研究員が試算したところによると、35〜54歳の非正規労働者(女性は既婚者を除く)が2000年から増加しており、直近では273万人。この層が高齢化していくと「下流老人」も雪だるま式に増えるので、社会全体にさまざまな悪影響を及ぼすというのだ。
火つけ役は『週刊東洋経済』。10月に発売した「絶望の非正規」という特集のなかで、「中年フリーター」の「残酷な現実」を紹介し、「中年フリーター273万人が生活保護予備軍として存在している」としてネットなどでも大きな話題となった。
12月3日には天下のNHKも『おはよう日本』で、「急増する中年フリーター」という特集を放映。「彼らが高齢化する近い将来、社会的な負担が増えることも懸念されています」として、「社会保障などにかかる費用が14兆円に上るという試算もあり、より本格的な対策が求められている」とした。
いずれも立派なジャーナリストのみなさんが取材をして、社会のためにと発信をされたことなので「そうなんだ」と素直に受け取る一方で、「中年フリーター」というキャッチーな言葉によって、図らずもスピンコントロール(情報操作)となってしまっていることが気にかかる。
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