「中年フリーターが増えると日本は危ない」は本当か:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
メディアが「中年フリーター」が増えていることに警鐘を鳴らしている。2000年代に入ってから増え始め、2015年には273万人に達しているそうだ。しかし、筆者の窪田氏は「中年フリーター」という言葉から、スピンコントロールの要素を強く感じるという。その理由は……。
「中年フリーター」に厳しい視線
一口に「35〜54歳の非正規労働者」といってもさまざまな事情がある。親の介護で正社員から非正規になった方、夢を追い続けてフリーターを続けている方、正社員として心身を削りながら働いていたがどこかでプツンと糸が切れてしまった方、そして正社員雇用を目指して働き続けてきたが、その希望がかなわないまま十数年が経過してしまった方、もちろん専門性を有していることでフリーになった方もいる。
元ネタの尾畠研究員のレポートでは、こういう細かいところまで言及をされているわけだが、報道になると、どうしても個々の事情のある人々をザクッと「中年フリーター」という網にかけている。
こういう響きがリフレインされて「問題」とされると、「中年の非正規労働者」にネガティブイメージがつく恐れがある。つまり、報道している側にはその気がなくとも、結果として「印象操作」になってしまうのだ。
実際、すでにネットでは一部の方たちが、「好き勝手生きてきたツケだろ」とか「選り好みをしなければ仕事などいくらでもある」などと「中年フリーター」の批判をしている。今後どこかのタイミングで社会保障費の減額を迫られるような際、「中年フリーター」と呼ばれる人々が「戦犯」と後ろ指をさされる時代がくるかもしれない。
そんな大げさなと思うかもしれないが、実は以前から社会保障を語る文脈では、「フリーター=頭痛のタネ」という扱いになっている。例えば、2001年10月16日の読売新聞では「フリーター急増で社会保障ピンチ?」という記事のなかで、この国の社会保障制度が「正社員を前提につくられている」という有識者のコメントとともに、フリーターの増加が国の制度設計に狂いを生じさせるとしている。
この15年で「自由な働き方」だとか「ダイバーシティ・マネジメント」だとか耳障りのいいオシャレな言葉が現われたが、「フリーター」には常に「社会保障のお荷物」という負のイメージがついてまわっている。つまり、国家にとって今も昔も「フリーター」という人々は、「対策」すべき問題を抱えた人というわけだ。このようなイメージにひきずられた世論が、「中年フリーター」と呼ばれる人たちに厳しい視線を浴びせることは容易に想像できる。
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