「中年フリーターが増えると日本は危ない」は本当か:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
メディアが「中年フリーター」が増えていることに警鐘を鳴らしている。2000年代に入ってから増え始め、2015年には273万人に達しているそうだ。しかし、筆者の窪田氏は「中年フリーター」という言葉から、スピンコントロールの要素を強く感じるという。その理由は……。
「正社員を目指す35〜54歳」の受け皿になる分野
なんてことを言うと、「言葉を着飾ったところで、35〜54歳の非正規労働者が273万人いて、財政の負担なるという事実は変わらない」という反論があるかもしれないが、一概にそうとも言い切れない。少し視点を変えただけで異なる未来が見えてくることだってあるのだ。
例えば、「中年フリーター」を「正社員を目指す35〜54歳」と言い換えれば、「フリーターの就労支援に力を入れます」というような焼け石に水的な対策ではなく、政府として本当に力を注ぐべきポイントが見えてくる。
報道によると、「中年フリーター」の多くは社会に出た時に正社員採用されなかったということでスタートからつまずき、非正規雇用が続いているという。総務省調査でも、男性が非正規になった理由で一番多いのが「正規の職員・従業員の仕事がない」ということだ。
ということは、「正社員を目指す35〜54歳」が目指すべき分野がおのずと見えてくる。まず、正社員になれないと意味がないので、正社員比率を上げていこうという業界でなくてはならない。新卒からコツコツと習得する専門技術が求められる仕事ではないこと、さらに派遣労働者の依存が少ない業界ということも重要だ。派遣を労働力の「調整」に用いているような業界では正社員登用のハードルはかなり高いからだ。
そんな都合のいい仕事はないだろと思うかもしれないが、ちゃんと存在している。「宿泊業・飲食サービス業」だ。
想像がつくだろうが、この分野は圧倒的に正社員の比率が低い。平成24年(2012年)の経済センサス・活動調査結果を見ると、すべての産業分類のなかで「正社員・正職員」の比率が最も低いのがこの分野である(21.6%)。
いや、2割の正社員が非正規をこきつかっているんじゃないのと思うかもしれないが、つい最近も話題になった「ワタミ」問題以降の風潮もあって、非正規労働者の正社員化の動きが急ピッチで進んでいる。今回の「中年フリーター」報道のベースにもなった厚労省の「平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」でも、それは顕著に現われている。
正社員以外の労働者比率について今後どうなるかという問いに対して、61%の事業者が「ほぼ変わらない」と回答。ほぼすべての分野で「低下する」という割合が一桁のなかで、「宿泊業、飲食サービス業」だけが14.6%と頭ひとつ飛び抜けているのだ。
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