もしビジネスリーダーがアリストテレスを読んだら:小林正弥の「幸福とビジネス」(2/3 ページ)
「ビジネスに幸福は必要か?」――。この命題に対して、哲学者・アリストテレスならどう答えるだろうか。人気番組「ハーバード白熱教室」で解説者を務めた小林正弥教授がひも解く。
もしアリストテレスがよみがえったなら?
以下では、現在の世界によみがえったアリストテレスのありがたいお言葉をお伝えしよう。
人生の究極の目的は幸福の実現にあるのじゃ。例えば、健康や仕事はそのための手段だから大事なのである。
そもそも幸福とは何じゃろうか。私が生きていた古代ギリシャの時代にもかんかんがくがくの議論が行われていた。嬉しいという喜びの感情だと考える者もいたし、名誉を得て人々から尊敬されることだという者もいた。
でも、これだけでは十分ではないのじゃ。当時は本当の幸福を「エウダイモニア」と言った。これは「良い神霊に守られている状態」という意味だから、日本でいえば福の神に守られているようなものじゃ。だからこのような幸福は倫理的にも「善き福」であるのじゃ。
人間には、魂の中に潜在的な資質や美徳(ほめるべき徳)がある。これらを開花して活動することによって、人間はこのような幸せを実現できるのだ。例えば、モーツァルトのような天才はもともと音楽的資質を持っているから、その天分を開花して音楽家になることによって真に幸福になる。彼のような人は他の職業についたらそれほど幸せにはなれないに違いないと思うぞ。
適職についたり、適した役割を果たしたりすることによって、その人にふさわしい快さや報酬・収入を得ることができる。それは移ろいやすい感情的幸福感とは異なるのじゃ。例えば、酒や麻薬で得られるような刹那的幸福感はそれらの陶酔が醒めると消えてしまうが、美徳に基づく幸福感ならば持続するじゃろう。
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