バークレーは非常に“意志の強い”イノベーターの街だった:松村太郎の「バークレー生活研究所」(1/2 ページ)
筆者が住むカリフォルニア州北部の街・バークレーが発祥となっているものは多い。例えば、カフェラテが生まれたのもこのバークレーだ。
前回のコラムでは、スティーブ・ジョブズの死がきっかけで筆者が米国に移り住んだということをお話しした。
今回は、筆者が引っ越してきた第2のホームタウンとなった街、バークレーについて紹介したい。
まずは地理的な条件から。バークレーはカリフォルニア州北部に位置する、サンフランシスコ近郊の街だ。クルマでも、高速鉄道「BART」でも、サンフランシスコ市内から25分ほどの距離にある。カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー、もしくはCal)を中心とした郊外の街として知られている。
カリフォルニアと聞いて「サーフィン」「ビーチ」「ビキニ」「ハリウッドセレブ」「青春白書」などを思い浮かべる方も多いと思う。正直、住み始めるまでの筆者のイメージもそうだった。サーフィンこそ太平洋岸で盛んだが、それ以外はすべてロサンゼルスの話で、バークレーからは800キロメートルほど南へ行く必要がある。
バークレーは夏場も数日しか「ビーチで水着!」という気温まで上がらず、肌寒い夏を過ごさなければならない。裏を返せば、日本の夏場に避暑としてバークレーを訪れる絶好のチャンス、ということもいえるだろう。
バークレーという街
バークレーという街は、前述の通り、UCバークレーがある。大学といっても、UCLAの方が日本からすれば耳馴染みがあるが、UCバークレーはカリフォルニア大学の本校にあたり、とにかく理系が強い。
その強さを物語るのが、キャンパス内にある「NL」と書かれた駐車スポット。このNLスポットにクルマを停めていいのは、ノーベル賞受賞者だけだ。物理系の建物の前の道にはNLスポットがいくつもあり、それだけの数が必要だということの表れだ。
筆者は中学時代に、付属の大学の「電算室」でNetBSDというOSが動く巨大なコンピュータに触れたことがあったが、このBSDとは、Berkeley Software Distributionの略。UCバークレーで開発されたUNIXオペレーティングシステムのことで、コンピューティングやネットワークの世界への影響も大きかったといえる。
UCバークレーは、米国における学生運動の発祥の地でもある。ベトナム戦争時に反戦運動が盛んになり、今でも「フリースピーチムーブメント」として伝わっている。人権や言論が脅かされる問題が起きたとき、バークレーでは必ずデモが起きる。筆者が移り住んでからのトピックは、「Occupy Wall Street」(もしくは99%ムーブメント)と、「Black Lives Matter」(白人警官による相次いだ黒人容疑者の殺害事件)だった。
特に後者は暴動のような激しいデモとなり、街中の「富」に類する施設が破壊された。例えば、銀行のATMの画面はすべて割られてしばらく現金を引き出せなくなった。また転売目当てなのか、ケータイショップも破壊された。こうした破壊活動に対して、地元の人は「バークレーのやり方ではない」と冷ややかな見方だった。
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