再契約を結んだ岩隈久志にみる「メジャーリーグ・ビジネス」の世界:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)
メジャーリーガーの岩隈久志投手がシアトル・マリナーズと再契約を結んだ。本コラムでは、メジャーリーグ特有の「マネーゲーム」を振り返り、関係者たちの思惑についても分析した。
何がなんでもフル稼働するしかない
ここで間髪入れずに再度猛アタックをかけたのが、古巣のマリナーズだ。ドジャースと岩隈が破談した情報をキャッチすると迅速に動いて話を取りまとめた。日米のメディアで「ドジャースと岩隈が交渉決裂」と一斉に報じられてからわずか13時間後、マリナーズは岩隈の再入団を電撃発表した。
18日にシアトルで行われた入団会見で岩隈は笑顔を見せ、最後は古巣の熱意に強く心を動かされたことを口にした。しかし、内心ではやや複雑な心境であったのではないだろうか。マリナーズと新たに結んだ契約内容は年俸1000万ドル(約12億1000万円)。2、3年目の2017年、2018年の契約更新については球団が選択権を持つ形でオプション(付帯条項)も含められている。とはいえ、当初からオプション抜きで3年契約にこだわっていた岩隈側としては、結果的に買い叩かれてしまった感はどうしても否めない。
確かに、フル稼働すればドジャースの提示額を上回れる。来季から3シーズンともシーズン投球回数で162イニングをクリアすると、3年総額4000万ドル(約48億4000万円)が懐に転がり込む。それだけでなく各シーズンで投球回数が190イニングに達し、満額の出来高を手にすることができれば、最終的にドジャースより上の3年総額4750万ドル(57億4800万円)になる。
しっかり働いてくれれば、出すものは出す。そういうマリナーズの姿勢の表れといえるが、岩隈にとっては逆に来季以降の成績が伴わなければ一転して厳しい状況下に追い込まれることにもなる。もし活躍できなければ、年俸を抑え込まれるどころかマリナーズから契約オプションを更新されず路頭に迷う可能性もあるからだ。この契約を結んだ岩隈としては、もう何がなんでもフル稼働するしかない。
その一方でマリナーズ側からみると、11月上旬に岩隈側に「QO」として提示した最初の条件よりも比較的自分たちに有利な契約で取りまとめることができたといえるだろう。基本額を安価に抑えて1年契約とし、高額な出来高と契約更新のオプションという“ニンジン”をぶら下げることで岩隈の尻叩きを行えるからである。
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