再契約を結んだ岩隈久志にみる「メジャーリーグ・ビジネス」の世界:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
メジャーリーガーの岩隈久志投手がシアトル・マリナーズと再契約を結んだ。本コラムでは、メジャーリーグ特有の「マネーゲーム」を振り返り、関係者たちの思惑についても分析した。
ドジャースが岩隈に難クセをつけた理由
ちなみにドジャースが指摘したフィジカル面での「異常」について岩隈は18日にシアトルで行われた会見で、まったく問題がないことを強調していた。これにはマリナーズの複数の幹部も「なぜドジャースが、そのようなことを言い出したのかまったく理解できない」などとコメントしている。どうしてドジャースは岩隈に難クセをつけたのか。話を総合すると、どうやらドジャースの編成面で実権を握るアンドリュー・フリードマン氏という編成部門取締役が、事の発火点となったようだ。
ウォール街出身の同氏は非常にシビアな見方をする人物で、かつてタンパベイ・レイズ(就任当初のチーム名はタンパベイ・デビルレイズ)のGMを務めて創設当時からお荷物球団とされていたチームを強豪チームに再建させたことでも有名。そのころから同氏は正式入団前の選手に対する身体検査に関しても他球団よりかなり厳しいラインを設定し、仮に少しでも引っかかれば、それをタテに条件を下げようとするなど相手に揺さぶりをかける交渉術が常とう手段だったという。同氏がメジャーリーグ界で「タフ・ネゴシエーター」と呼ばれている理由には、そういう背景がある。
だからフリードマン氏の本音としては、ウィークポイント発覚を再交渉材料として当初合意していた条件よりもガクンと下げ、最終的にそれを岩隈側に飲ませる算段があったようだ。なによりドジャースは右の先発投手が絶対的に不足しているチーム状況であったことから、メジャーでも経験豊富な右腕の岩隈獲得は現場サイドでも大歓迎されていた。そういう観点から考察するとマリナーズに巧くスキを突かれたフリードマン氏らドジャース編成担当者は「大きな作戦ミスを犯した」と今ごろ地団駄を踏んでいるかもしれない。
さて、もともとマリナーズと岩隈は条件こそ何だかんだと揉めたが、両者ともにチーム残留を熱望する相思相愛の間柄だった。マリナーズ側は契約最終年の今シーズン中から岩隈側に「残ってほしい」と慰留交渉をまとめようとしたが、不調のままシーズン終了を迎えてしまったことで、やむなく前出の「QO」を提示した。
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