三陸縦貫鉄道が終了へ……BRT自身の観光開発に期待:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
東日本大震災で被災した三陸沿岸の大船渡線、気仙沼線について、大船渡市長がBRTの本復旧を了承した。沿線市町村がBRT受け入れ容認という空気感の中で、大船渡市の踏み込んだ判断が決定打となる。両路線の鉄道復活は消えた。鉄道のない町という選択、厳しい未来への挑戦が始まる。
「鉄道を見限った町」の意地を見せよう
BRTのメリットは、鉄道よりも自由な運行が可能になることだ。気仙沼線と大船渡線の接続駅、盛を境界にする必要もなかろう。前谷地から盛まで直通する座席指定の特急バスがあってもいい。将来は盛以北も久慈や盛に直通する観光特急が走るだろう。そこに接続するユニークなバスがあったら……と思うと楽しくなってくる。
BRTは鉄道代行バスではない。JR東日本の見せ方はとても上手で、BRTを未来の交通機関だと感じさせる。ならば、もっと楽しいBRT旅を開発してほしい。私がBRT区間に乗ってみたところ、バス同士のすれ違いができる場所が多く、それもあまり使われていない印象だった。BRT専用道はまだダイヤにゆとりがある。BRT区間の走行には特殊な信号装置が必要のようだけど、この装置を地元の観光バス、高速バスに提供し、オープンアクセスを検討してもいいと思う。BRT対応の高速バスがあってもいい。仙台からBRT区間直通、東京からの夜行バスをBRT区間へ直通させてもていい。
鉄道復旧の可能性がなくなった。これを「鉄道に見捨てられた町」だと意気消沈してはいけない。富山県の古びた富山港線が「富山ライトレール」に転換して全国から注目されたように「南三陸のBRTはおもしろそうだ」となれば、国内観光の候補地として存在感が出る。考え方を変えよう。むしろ南三陸は「旧態依然とした鉄道を見限った町」として成功の可能性を秘めている。そしてそれはJR東日本の不利益にはならない。この手法はほかの赤字ローカル線問題の解決に応用できるからだ。
鉄道かバスかの議論は決着した。もうすぐ震災から5年。復興から新興へ転換するときが来た。
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