ドローンが人間を救う! 世界初の“救援隊”出動:水曜インタビュー劇場(正月編)(4/5 ページ)
2016年、ドローンがさまざまな場で活躍しそうだ。可能性が広がる中で、ドローンを使って「被災地の地図を作る」動きが進んでいる。世界初のプロジェクト「ドローンバード」とは、一体どういった仕組みなのか?
「自助」「共助」との連携が大切
古橋: 世界銀行やアジア開発銀行などは、被害想定額を算出して、支援額を決めるんですよね。しかし、その被害想定額を算出するデータが不足するケースが多いんですよ。結果、支援額の決定が遅れてしまう。支援額の決定もできるだけ速いほうがいいので、私たちが作った地図が役に立てればいいなあと思っています。
土肥: 古橋さんの話を聞いていて感じたのですが、やはり公的な機関との提携がこのプロジェクトのキモになるのではないでしょうか。「災害後の地図ができた。でも使ってくれる人がいません」ということではもったいない。
古橋: 伊豆大島の土砂災害のときには、国土地理院と連携をとりました。ドローンを飛ばすことはできませんでしたが、国土地理院の飛行機から撮影した写真をもとに、地図を作りました。
公的な機関との連携も大切なのですが、それだけではダメなんですよ。災害時には「自助」(自分または家族で守ること)、「共助」(近隣が互いに助け合うこと)、「公助」(警察や消防などによる救援のこと)という考え方がありまして、阪神淡路大震災のときには「公助」で救助された人は、全体の10%もいません。90%以上の人は自力または周囲の人たちの手によって助けられているんですよね。もちろん公的な機関との連携は大切ですが、「自助」「共助」との連携も大切なんです。
大災害が起きたときには、「公助」だけの力では足りません。「いまどうなっているのか。どのように行動すればいいのか」といった事態に陥ったときに、国が出す情報のほうが速いのか。それとも私たちのようなところが出す情報のほうが速いのか。私たちの地図は正確性には欠けるかもしれませんが、国が出す情報も正確ではないかもしれません。
土肥: どういう意味でしょうか?
古橋: 福島原発で事故が起きたときを思い出してください。当時の政府は正確な情報を提供したでしょうか?
繰り返しになりますが、私たちが作る地図は正確ではないかもしれません。 Wikipediaと同じような仕組みなので、いつまで経っても正確にはならないかもしれません。ただ、災害時に必要なのは「迅速」さ。できるだけ速く地図を提供することができれば、そこに価値が生まれてくるのではないでしょうか。
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