ココイチのカツ横流し事件、産廃業者の「ひとりでやった」が信用できない理由:スピン経済の歩き方(1/4 ページ)
ココイチの「カツ横流し事件」が世間を騒がせている。今回の不正は、産廃業者ダイコーによる“単独犯”ということになっているが、筆者の窪田氏は「『ひとりでやった』というのは信じられない」と指摘している。なぜなら……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先週、世間を騒がした「ココイチ廃棄カツ横流し事件」。発覚の経緯が、ココイチのパートの方が、たまたまスーパーで「壱番屋」の名をかたって販売される「お値打ち品」を見かけたという「偶然」だったことからも、事件が「氷山の一角」である可能性は高い。
産廃業者ダイコーから廃棄カツを仕入れた食品関連会社「みのりフーズ」の倉庫には、壱番屋のメンチカツやロースカツのほか、ビンチョウマグロのスライス49箱、焼き鳥のモモ136箱(1箱約14.4キロ)、骨付きフライドチキン20箱という、「賞味期限切れ商品」がわんさかと見つかっている。つまり、これは食品の「横流し」が常態化していたということだ。
18日現在、今回の不正はあくまでダイコーの大西一幸社長の、「単独犯」ということになっている。
愛知県の調査に対し、「ひとりでやった」と自白し、みのりフーズも廃棄食品だと知らなかったと主張。さらに、ダイコーはかなり経営難に陥っているという報道もあり、「動機」もバッチリだからだ。
確かに「事業が傾いて悪魔が囁(ささや)き、不正に手を染める」というのは、零細企業あるあるなので、一定の説得力はあるのだが、あくまで過去の前例と照らし合わせると、「ひとりでやった」というのは信じがたい。
まず第一にひっかかるのは、「実質的経営者」だ。
ご存じの方も多いと思うが、みのりフーズで各社のインタビューに気前よく応じる男性の肩書きである。新聞社の多くは「実質的経営者」、NHKは「実質的な経営責任者」と報じている。登記上の代表者は、単に名義を貸しているだけで、実際は取り仕切っている場合などはこういう表現となる。
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