IoT時代の製造業、ハード&ソフトで稼ぐための障壁とは?
IDCの発表によると国内IoT市場は2020年に13兆7595億円に達する見込み。特に製造業の投資が急速に増えている。そうした中、ハードメーカーは組み込みソフトウェアでの収益アップを図るが、課題もあるという。
さまざまな機器がインターネットでつながる「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)という言葉が日本でも普及し始めた当初は、「またIT業界特有のバズワードか」と思われたビジネスパーソンは多いはずだろう。そこからさほど時間が経たぬうちに、今ではビジネス現場でも当たり前のようにこの言葉を見聞きする機会が増えた。
企業だけでなく国もIoTに注目している。例えば、経済産業省では2015年10月にIoTやビッグデータによる産業活性化を目的とした「IoT推進ラボ」を設立。産官学連携でさまざまなプロジェクトに取り組む。プロジェクトの対象分野はIoTの活用が進むと見られる製造やモビリティ、医療、金融など多岐にわたる。特に製造業ではIoTやビッグデータによってビジネスモデルが大きく変わろうとしている。
調査会社のIDC Japanが2月23日に発表したレポートによると、国内IoT市場は2020年まで年間平均成長率16.9%で伸びていき、13兆7595億円に達する見込みだ。また、2015年の見込み値は6兆2232億円(前年比15.2%増)で、IoTに対する年間投資額が最も大きいのが組み立て製造業、次がプロセス製造業だという。
こうした中で、政府も日本の基幹産業である製造業の成長に向けて、IoTの進展に期待する部分は大きい。なぜなら、いまやハードウェアメーカーはかつてのように商品が単体で売れる時代ではなくなっており、競争力を高め、収益を上げるには組み込みソフトウェアが大きな差別化要因、付加価値要因となっている。そこにIoTも大きくかかわってくるのである。
例えば、家電メーカーのアクアでは、冷蔵庫の扉に液晶ディスプレイを搭載した「AQUADIGI」を開発中だ。この商品の狙いは、従来の冷蔵庫の機能に加え、ディスプレイを大型のタブレット端末と見立てて、そこにさまざまなコンテンツや情報を配信することで、利用者からサービス課金をしようというのである。ユニークな例として、冷蔵庫内にセンサを付け、牛乳やタマゴなどがなくなったときに自動的にネット通販で注文、補充する仕組みなどが実装できるようになるかもしれない。これは裏を返せば、冷蔵庫の単品売りではもはや事業が大きく広がらないことの現れでもある。
現状でもこうしたハード+ソフトのビジネスモデルは存在する。例えば、オフィス用複合機がそれだろう。最初は印刷だけの機能を搭載しておき、顧客の要望に応じて、スキャナーやファックスなどの機能を追加提供する。
ただし、このようにハードメーカーがソフトで“稼ぐ”上で重要になっているのが、ソフトの不正コピー防止対策である。不正コピーは世界中で横行しており、実際に競合他社にソフトウェア情報をコピーされて、あるいはソースコードが流出して、ビジネスに大打撃を受けた日本企業も少なくない。
その対策として、例えば、自社でソフトのライセンス管理システムなどを構築する日本メーカーは多いが、開発費だけでも多いところで年間数億円もかかっているのが実態である。そこに勝機を見出し、製造業を中心とする顧客ニーズをくみ取ろうとしている1社が仏ジェムアルトである。同社はデジタルセキュリティ分野のグローバルリーダーで、2014年の全社売上高は25億ユーロ。世界100カ国以上で事業展開し、1万社以上の顧客を持つ。
同社が提供するのは、その名もソフトウェア収益化ソリューション。これはソフトの不正コピーや無断配布、改ざんなどを防ぎ、新たな収益源や既存の収益を保護するというもの。日本において現状ではCADメーカーや端末メーカーなどからの引き合いが強まっているという。
今後さらに製造業のグローバル展開が加速する中で、その組み込みソフト技術を狙った攻撃なども高まるだろう。ジェムアルトはそうしたリスクを未然に防ぎ、製造業のビジネス拡大を支援していきたい考えだとする。
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