財政破たんから3年、デトロイト再生に取り組む起業家は何をしているのか:事例に学ぶ、地方創生最前線(2/3 ページ)
かつて世界最大の工業都市として繁栄を謳歌した米国ミシガン州デトロイト。自動車産業の凋落とともに急激な人口減少と治安の悪化に見舞われた同市では、再生のためのさまざまな取り組みが進められている。
デトロイトに復活の兆し
そんなデトロイトに復活の兆しが見えつつある。その主役は大小さまざまな起業家たちだ。そのひとり、フード・ベンチャー「バンザ」を起業したブライアン・ルドルフは、大学卒業後、デトロイトに移住した。「起業以外のキャリアは考えていなかった」彼は、ITベンチャーの創業の現場に参画するため、ベンチャー・フォー・アメリカという若手人材と起業家をつなぐインターンシップ・プログラムを使って、デトロイトにやって来た。ともにやって来た仲間と廃墟となっていた住宅を買い取り、リノベーションして住む場所を確保したそうだ。
ひよこ豆が何よりも好きだったブライアンは、「それを使ってグルテン・フリーのパスタをつくろうと思ったのがきっかけ」で、小麦を使ったものよりタンパク質を豊富に含むヘルシーなパスタを開発。周囲の反応が良かったため起業に至った。「デトロイトには貧困家庭が多く、不健康な食生活を送っている。ひよこ豆のパスタを食べて健康になってもらいたい」とブライアン。ひよこ豆パスタを世界中に届けようと目論むバンザは、現在25人以上を雇用する事業に成長している。
次に紹介するフィル・クーリーは、世界を股にかけるファッションモデルという異色の経歴の持ち主である。フィルは荒廃した地区にあった建物を取得し、使われなくなっていた生産設備をかき集めてシェアオフィス「ポニーライド」を創業した。「住民がアイデアを持ち寄って何か新しいことを始めたり、地域コミュニティのつながりを再構築したりする場が必要だと感じていた」とフィル。
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