ベンチャー企業がそっと消える理由(3/5 ページ)
ベンチャー企業の中には衰退・廃業する企業がある一方、飛躍的な成長を遂げる企業もあります。 本稿ではそれぞれの組織の段階について、実際にお会いした起業家の方々の話をふまえて実務家の視点で考えてみます。
機能別組織の長所と短所
「私たちは、このペースでずっと働き続けなければならないのだろうか」、「この働き方では、売上にも限界があるのでは……」。プロ集団がそう思い始めたら、機能別組織づくりをめざします。
機能別組織の長所は、プロ集団が作ったビジネスを、役割やタスクで分解し、ルールや業務標準を整備することで、そこまでスキルが高くない人たちでも成果を生みやすくなり、結果として売上を伸ばしやすくなることです。
もちろんプロ集団がめざす品質にはほど遠いのですが、量的対応ができるので、売上の上限も大きくなるでしょう。
短所は、まず機能別組織をつくること自体が成功の可能性が低く、高スキル人材が離れていく可能性がある、ということです。前述の通り、多くのベンチャー企業は内部から崩壊していきますが、多くはこの機能別組織づくりのタイミングではないかと推察します。
まず、高スキル人材と低スキル人材が混ざると、業務の品質やスピードへの「当たり前感覚」がズレているので、コミュニケーションコストが膨大になります。コミュニケーションコストと書けば見た目はよいですが、膨大な時間とエネルギーを消費し、ストレスや軋轢(あつれき)、機会損失を生みます。
これには双方の歩み寄りが必要なのでしょうが、そもそも感覚がズレているということを認識することができないケースも多いのが実際でしょう。
そこで、ルールや業務標準をつくることになるのですが、「自身にルールをつくる時間がない」「メンバーがルールをつくっても守らない」という現実が待っています。実際には、メンバーが「そもそもルールを理解できていない」「理解しているがスキルがなくて実現できない」という背景があるのかもしれませんが、そこは、メンバーにもプライドがあるので認めづらいところです。
「実現が不可能なルール」という烙印を押されます。(理由はともあれ、実現不可能とするならそれも正ですが)
そんなこんなでプロ集団の一員だった高スキル人材には「低スキル人材の相手をするのが面倒」「忙しくなったのに彼らの人件費のおかげで報酬はむしろ下がった……」という不満を抱えるようになり、次第に去っていきます。
まだ機能別組織が回っていない状況で、一定以上の高スキル人材が去ってしまったベンチャー企業では、業務品質の維持も難しく、また人件費を賄う売上も確保できません。そっと消えてい区ことになります。これは決して大きい組織の話だけでなく、2〜5人程度の規模でも、十分に起こり得ることです。
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