生涯でたった1度しか笑わなかった上杉景勝:「真田丸」を100倍楽しむ小話(1/2 ページ)
上杉謙信から家督を継ぎ、重臣・直江兼続とともに上杉家の発展に大きく寄与した上杉景勝。その人物像は無口で武骨、何と言っても生涯で1度しか家臣の前で笑わなかったそうです。
無口で武骨
編集部F: 「真田丸」の前回放送(3月13日)でいよいよ上田城築城の話が出てきました。私も2〜3度足を運んだことがあるのですが、もう数十回と訪れたであろう小日向さんにとって上田城の魅力とは?
小日向: 上田城は何といっても、真田昌幸が心血を注ぎ築いたお城で、「あの徳川軍を寡兵を以って2度も蹴散らした上田合戦の舞台」というところにロマンを感じます。
編集部F: そもそも上田城は、徳川家康が上杉景勝に対する防衛線として、上杉軍の虚空蔵山城の向かいに築いたわけですよね。
遠藤憲一さん演じる景勝は真田丸でも頻繁に登場しています。前回の放送では真田幸村が景勝を説得する場面が見応えありました。景勝と幸村の関係性は強かったのでしょうか。
小日向: 1585年に幸村は上杉家に人質に出されています。ちょうど真田家が徳川から上杉に寝返るタイミングで。ここで幸村は「義」を学んだと言われています。
厳密に言うと、当時は義という概念はなかったのですが、それと似たような精神を景勝の忠臣である直江兼続や上杉家から幸村は教わったんだと思います。それがあったからこそ、最後の「大坂夏の陣」で見せた戦いぶりにつながったとされています。
編集部F: 義というものはなかったのですね。よくドラマでも主君のために、などと言いますが。
小日向: 歴史学的には、義は江戸時代に生まれたものです。ですので、おっしゃるような忠誠心や美学など、損得勘定できない精神というものを上杉家で学んだのでしょう。
ちなみに、義の戦国武将といえば、幸村、兼続、そして石田三成と言われていて、歴女に人気の3人です。私も「義」に厚い武将は大好きです。
編集部F: 景勝はどんな人物だったのでしょうか。
小日向: 生涯、家臣の前で笑ったのはたった1度だけと言われているほど、無口で武骨な武将だったようです。唯一笑ったのは、猿が自分のモノマネをしたのを見たときらしいです。笑いのツボが謎ですよね(笑)。
編集部F: 一生で1度とは……。
小日向: もし会えたら、ぜひ笑わせてみたいですよね。しゃべらないし、表情もないので、物語によって描かれ方が違う武将です。それが景勝の面白いところかな。
編集部F: たまたま景勝がそういうタイプの性格だったのか、上杉家自体にそういう風潮があったのか。
小日向: 一方、兼続はとてもおしゃべりです。「直江状」もやたら長いし、1言ったら10返すような人だったみたいです。だから景勝にとっては、自分の代わりに兼続がたくさん言ってくれるから無口でも良かったのかもしれませんね。
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