始まった電力自由化 7.5兆円の“戦場”でいま何が起きているのか(2/2 ページ)
「電力自由化特集」第1弾では、複雑化する電力自由化の“戦場”の構図について、いま一度解説する。
競争が加熱する3地域。一方で、地方特化型の新電力企業も誕生
今回の電力小売り全面自由化により、全国の消費者は電力会社を自由に選べるようになるわけだが、今後、競争が激化する主戦場は東京、東海、大阪の3地域になると巻口氏は説明する。
「来年はガスが自由化されるが、全国の都市ガス会社約200社のうち、1割弱が仙台市ガス局などの公益ガス会社。つまり、自由化になじまない地域も多いのです。そのため、独占していたガス管の解放(電力でいうと送配電網にあたるもの)は東京ガス、東邦ガス、大阪ガスの3社のみで、競争が加熱するのは、そのガス会社がカバーしていた3地域になります」(巻口氏)
エネルギー系の企業は、来年のガス自由化も見据えている。大手電力会社などはガス管が解放される関東、東海、関西地方に目を向けるため、その3地域を主戦場として競争が繰り広げられることになるわけだ。
その一方で、こうした主戦場でのシェア獲得競争とは別に、特定の地域に特化した電力小売り事業を展開する企業もある。その一つが、オール電化のリフォーム事業などを展開するスマートテックがプロサッカーチームの水戸ホーリーホックと共同出資で立ち上げた水戸電力だ。
同社は水戸市に本社を置き、地域(茨城県内)に根ざして電力を販売する。その地域で発電した再生可能エネルギーの電力を、その地域で消費するいわゆる「地産地消」を目指しており、地域との連携を深める。また、水戸ホーリーホックのサポーター向け電気料金プランを用意するなど、地域特化型ならではの戦略を打ち出している。さらに、この再生可能エネルギー事業を通じて雇用の創出を図るなど、地域活性化の役割も担っているのも特徴だ。
他にも、メガソーラー事業などを展開するNTTファシリティーズと岩手県北上市が協定を結んで設立した北上新電力も地産地消を進めるなど、地域特化型の電力小売り事業も盛り上がりをみせている。
水戸電力や北上新電力の事例のように、電力小売り自由化に伴うさまざまな新ビジネスが今後さらに誕生していくと考えられる。電力小売り自由化はまだ始まったばかり。各社の新しい提携の動き、新ビジネス誕生の動きは今後ますます加速していくだろう。次回では、東京電力と東京ガスの2社をメインに解説していく。
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