電力切り替えのテレビCMは、なぜ「ふわっ」としたものが多いのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
2016年4月、電力自由化がスタートした。新電力会社として660以上の事業者が登録し、各社はCM合戦を繰り広げているが、なぜか「ふわっ」とした内容のものが多い。その理由について、筆者の窪田氏は……。
お役人の本当の狙い
日本ロジテック協同組合のビジネスモデルは、工場などで自家発電設備を持つ事業者から一括調達した電力を、大手電力会社より安い価格で自治体や企業向けに供給するというもの。自前の発電所を持たないので結局、「薄利多売」となっていき、収益力が落ち込んでギブアップしたというわけだ。
大手とされた企業ですらこれだ。660の事業者もかなりの数が「淘汰」されるとみていい。この現象は、英国でも確認されている。全面自由化でさまざまな新電力会社が現われたが、厳しい競争の中で合併や買収が進み、今では旧国営ガス事業者など大手6社が9割を占める。
日本の電力自由化でもこのような「業界再編」が進むのは容易に想像できる。というよりも、実は役人はそれが狙いだ。
エネルギー産業というのは国力と直結している。小さな事業者がポコポコ乱立するよりも、片手に収まるくらいの巨大企業が牛耳ってくれたほうが、国としては統制しやすい。もっと言ってしまえば、電力、ガス、石油などすべてがひとまとめになってくれればなおありがたい。産業を支える「力」はひとつにまとまったほうが、「国際競争力」を高められるという考えが根底にあるからだ。
つまり、電力小売全面自由化というのは「国」のためという大義のためであって、一般消費者の利益のためではないのだ。
おいおい、こいつはとんでもないことを主張するなと驚くかもしれないが、このような考えが日本の電力事業の繁栄を築いてきた。それは歴史も証明している。
戦後、それまでは国営だった電力事業が民営化され、いわゆる「9電力」が誕生した。しかし、この電力再編成は、消費者を大いに苦しめる。2年でなんと7割も料金を引き上げたからだ。
終戦直後で日本中が飢えていた時期である。当然、「殺す気か!」という声がわきあがり、今の国会前のみなさんのような方たちがワーワーやった。
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