電力自由化で東ガスが圧勝する? その理由とは:電力自由化特集(2/3 ページ)
電力小売自由化の激戦区、首都圏。東京ガスは巧妙につくられた料金体系で「おいしい部分」を持っていく戦略で東京電力への攻勢をかけている。東電も新料金プランを打ち出してはいるが……。
東京ガスが電力業界のプライスリーダーになれる理由
新電力のほとんどは、自前の発電設備を持っていない「電気の商社」である。太陽光でも風力でも火力でも水力でも、発電した事業所(卸電力会社)から電気を仕入れ、東電の送電網を利用して契約した電気のユーザーに販売する。電気を売買する日本卸電力取引所(JEPX)の「電力スポット市場」も既にできている。だが、東ガスの場合、東電の送電網を利用する点では他と同じだが、発電に関してはれっきとした「電力会社」である。
電力自由化が始まった2001年に大口需要家向けに参入して以来15年の実績があり、自社グループ内に他社と共同の施設も含め、大型火力発電所が4カ所ある。発電能力(グループ持分合計)は130万KWで、東電の原発ほぼ1基分にあたる。
販売でも、出資するENNET(エネット/東京ガス、大阪ガス、NTTファシリティーズが共同出資)は新電力の中で41.1%のシェアを占め、最大勢力だ。東ガスは2015年3月期、連結ベースで1年に106.1億KWの電力を販売したが、2011年3月期の70.4億KWから4年間で約5割も増えている。
東ガスは2020年までに総発電能力を約300万KWに増強する計画で、これは沖縄電力(約213万KW)の総発電量より大きく、四国電力の総発電量696万KWの4割強に匹敵する。さらに500万KWへの増強も視野に入れており、近い将来、地域電力会社並みの安定した発電能力を備える計画だ。
発電所を自前で持つ強みは、まず燃料コスト。発電燃料のLNGは都市ガス生産用と一緒に輸入するのでスケールメリットが効き、輸入先との商談で有利になる。それだけではない。夏の昼間のような電力需給のひっ迫時にも自前の電力で安定供給ができ、もし電気が余れば、高い「時価」で他の新電力に卸して収益をあげることもできる。
こうした理由から東ガスは電力小売価格競争で値下げ攻勢に出ることができ、電力業界の「プライスリーダー」になれるのだ。新規契約を獲得し、シェアをさらに伸ばせる。「ラストワンマイル」のガス供給と小口料金収受を100年以上続けてきた実績とそのインフラも、サービス、コストの面でプラスに作用するだろう。
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