クライストチャーチ大地震から5年、現地の復興はどうなっているのか?:事例に学ぶ、地方創生最前線(2/4 ページ)
東日本大震災の約1カ月前に発生したクライストチャーチ大地震。震災から5年を経たクライストチャーチの中心市街地は、新しい都市へと生まれ変わりつつあるようだ。
人々が集うコンテナショッピングモール「Re:START」
そんなクライストチャーチだが、「震災前より良い街に」と行政や民間によるさまざまな取り組みが進められている。その象徴的な取り組みのひとつが、輸送用コンテナを活用した仮設商店街「Re:START」だ。震災後に営業中止を余儀なくされた商業者を街中に呼び戻し、活気を取り戻そうと、クライストチャーチ地震救援基金とニュージーランドASB銀行が支援し、中心市街地のメインストリートにショッピングモールが造られた。震災から約半年後の2011年10月のことである。
当初、Re:STARTは半年間のみ営業する予定だった。しかしオープンしてみると商売の再開を望む店舗が次々に集まってきた。さらに世界で最も売れている観光ガイド『ロンリープラネット』が2013年、クライストチャーチを「訪問すべき都市トップ10」に挙げ、その中で「一風変わった必見スポット」としてRe:STARTを取り上げたため、一躍人気観光スポットとなった。こうして存続してきたRe:STARTも、2016年内には新設店舗に全面移行する予定だ。商業者に活動再開の場所を、そして人々に集まる場所を提供していたRe:STARTの意義は市民に高く評価され「これからも続けてほしい」という声も多いそうだ。
市街地の隙間を埋める「ギャップ・フィラー」
クライストチャーチの街を歩くと、空き地を活用した屋台村やダンスステージを見かける。震災後に発生した空き地を活用し、街に彩りを添えているこれらプロジェクトの仕掛人が非営利組織「ギャップ・フィラー(Gap Filler)」だ。「2010年の地震の後(注:この年にも大きな地震が発生している)、中心市街地には歯抜けのように空き地ができた。その隙間を埋めるために、アーティストや飲食店と空間づくりを始めたのがこの活動のきっかけ」と共同代表のライアン・レイノルズは語る。
被害が大きかった2011年の地震後、ギャップ・フィラーのもとに市民からさまざまな空間活用のアイデアが寄せられた。彼らはそうした声を集約し、行政や地権者と調整して次々と新たな空間をプロデュースしていった。「街は建物ではなく人でできている。行政による大規模な再開発だけでなく、住民参加による小さな居場所づくりが大切だと思う」とライアン。ギャップ・フィラーでの実績が評価され、街づくりに関するさまざまな委員会でも活躍する彼は、行政と市民のギャップを埋める公民連携の街づくりを進めている。
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