なぜ三菱自動車は不正に走ったのか 「技術屋の頑固さ」が落とし穴:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
三菱自動車が燃費データ不正問題で大きく揺れている。経営陣が積極的に情報を開示しないので、マスコミ各社はそのスタンスを痛烈に批判しているが、筆者の窪田氏は違うポイントに注目している。それは……。
三菱自動車の「常識」
燃費データに届出値との乖離(かいり)があることを指摘したのは日産自動車だ。昨年の11月ごろに気付き、12月に合同調査をしたいと三菱側に申し入れをした。それを受けて今年2月に2社の合同調査を実施し、分析結果で走行抵抗に差があるということが判明したのが3月末。その結果を踏まえて、4月から社内調査を行い、「不正」が判明して、品質統括部門長開発担当の中尾龍吾副社長に届いたのが今月12日。その翌日に相川社長が知ることになった。
「不正」だと確定してからは早いような印象を受けるかもしれないが、日産側が「乖離」を指摘してからは5カ月、自分たちもかかわる合同調査の結果が出た後も2週間も経過している。
共同開発した軽自動車の燃費データが届出値と違うというのは、自動車メーカーにとって、経営トップが陣頭指揮をとって、全力でマネジメントにあたるべき「危機」である。その兆しが見えているにもかかわらず、2週間も社長への「不正の可能性」を進言しないというのは、三菱自動車的には「常識」なのかもしれないが、一般人の感覚では理解に苦しむ。
当然、会見場にいた記者からも、日産とやりとりをしている間になぜ社長に報告しなかったのかという質問が飛び出た。中尾副社長はやや戸惑いながら以下のように答えられた。
「日産とウチの開発のトップ同士がやっているので、普通ならそこで解決しているはずなんです。それが解決できていないからここまできたということ」
あくまでこれは「開発」が解決すべき事案で、それを差し置いて経営トップが強制介入するのは筋が違うというのだ。この主張を聞いて、すぐに「セクショナリズム」という言葉とともに、2000年のリコール隠し事件のことが頭に浮かんだ。
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