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“不謹慎狩り”の背景にあるもの それは共感と共有のディストピア(3/4 ページ)

災害時に寄付を公表した人が「不謹慎狩り」の標的にされ、過去に騒動を起こした人が出演したCMは放映中止に追い込まれる。そんな世の中は息苦しい、「もっと寛容に」という声もあるが、現代を生きる人々にとってそれはそんなにたやすいことではない──と作家の堀田純司さんはみる。

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サバイバルゲームの中で

 逆にいうと、日本もまた「ひとつ間違えると共感と共有の輪から脱落して叩かれるサバイバルゲーム」という現実に暮らし、これを作品の中のディストピアに仮託している事情は変わらない。

 これらディストピア作品では「現体制の虚構が暴かれ、若者たちが革命の担い手となり、体制を変えていく」という展開がしばしば見られます。

 “上級国民”は特権を持つ。しかしそのシステムのアウトサイダーである一般国民から、やがてシステム自体を破壊し、変革を目指す若者が現れる。こうした展開もまた、現代のリアルなのでしょう。

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「不謹慎」は地震直後に多くツイートされた=Yahoo!リアルタイム検索より

 コンテンツ分野を見ると、社会の「暗い状況」が思った以上にすでに現実。こうした状況を踏まえずに、ただ「息苦しいのはやめよう」と言っても、「俺らは、厳しいゲームを慎重にプレイしてるのに、おまえらは、なんてゆるゆるなんだ。お花畑でなに言ってんだ」と反感を買うだけではないかと思います。それがいいか、悪いかではない。それが現実であると。

 確かに、ネット社会は厳しい面もある。芸能の人に聞くと、今の新人アイドルは昔と違って、告知やファンサービスの一環として、SNSをやるのが必須。そうするとユーザー対応にも追われるし、また、自分の動向もSNSに投稿されてしまうかもしれない。そうするとプライベートの言動も24時間、注意しなければならない。「昔とくらべてやることが多く、厳しい」と言います。

 また「共感と共有」の現代社会では「真面目である」ことが支持される。一昔前は「ワル」がかっこよかったバンド活動でも、現代では真面目で誠実であることが大事だそうです。「徹夜で飲んでライブもヘロヘロな出来だったよ。ヒャッハー」みたいなことをSNSに投稿しているようでは、人気もでない。ファンはそういうところをよく見ていて、真摯に活動しているバンドが支持されるといいます。

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