“不謹慎狩り”の背景にあるもの それは共感と共有のディストピア(4/4 ページ)
災害時に寄付を公表した人が「不謹慎狩り」の標的にされ、過去に騒動を起こした人が出演したCMは放映中止に追い込まれる。そんな世の中は息苦しい、「もっと寛容に」という声もあるが、現代を生きる人々にとってそれはそんなにたやすいことではない──と作家の堀田純司さんはみる。
「絶望がリアル」の次は
こうした社会は確かに息苦しくもあるでしょう。ただ、悪意が集中することがあれば、善意もまた集めやすくなっているはずで、人の営みには悪い面もあれば、プラスの面もあるはずと思います。
個人的には「いざ失敗した時にめちゃくちゃ叩かれる」ことよりも「被害者でさえ、憶測であれこれ言われる」ことのほうが、問題があるだろうと感じます。
それに価値観は変化します。以前は、人がメシを食っている横でタバコを吸うのも普通でしたが、今では「ランチ禁煙」みたいなマナーが広まりつつある。これは、いい方向への変化といえるでしょう。
真面目であることが支持されるようになったのも、それはそれで悪いことではないのでは? もっともひとつ間違えると、めちゃくちゃ叩かれることになりますが。
絶望がリアル。この状況は「新世紀エヴァンゲリオン」が放映された90年代後半とちょっと似ている。あの時は、次に「純愛ブーム」など、いい話の時代が来ました。今の「絶望時代」の次には、どんな作品が出てくるのでしょうか。
堀田純司 作家。1969年大阪生まれ。主な著書に「オッサンフォー」「僕とツンデレとハイデガー」(講談社)、「メジャーを生みだす マーケティングを越えるクリエーター」(KADOKAWA)などがある。「ガンダムUC証言集」(KADOKAWA)では編著も手がけた。日本漫画家協会会員。
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