今後の不動産所有権の考え方
未登記により相続人が確定できない点は、マイナンバー制度を利用して不動産所有者をひも付けすれば、相続人の確定は簡単です。問題の本質は、持ち主が「所有に熱意を失っている」ことではないでしょうか。
これまでの日本は、積極的に管理してもしなくても、不動産の「所有権」に対する絶対性を認めてきました。しかし、高齢化が進み、誰かの助けが必要になってくれば、「たとえ自分のものでも、住んでいるところ以外の土地の管理までできない」と思うのは当然かもしれません。
そう考えると、高齢化社会における空き家・空き地問題は、起こるべくして起こったといえます。おそらく、今までのルールに沿った考え方では、解決はかなり難しいでしょう。
「公共の福祉」といえども、立ち退きは慎重に行うことに変わりないです。使用の実態がない土地などを公共用に収用するといった手続きは、少々乱暴かもしれませんがかなり簡素化して国や地方自治体に帰属できるようにしなければ、都市そのものも共倒れになる可能性があります。
今後は、マンションなどの集合住宅で区分所有者が高齢化し、居住者が歯抜け状態となる「空き部屋問題」が加速してくると思われます。
そろそろ、不動産所有権に対する考え方を変えなければならない時期に差し掛かっているのかもしれません。(田井能久)
著者プロフィール:
田井能久
株式会社 タイ・バリュエーション・サービシーズ 代表取締役/専任不動産鑑定士
1981年、日本不動産研究所入所。1985年、不動産鑑定士に登録。2004年、ハドソンジャパン株式会社入社。2006年、株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズを設立。不動産の鑑定評価業務を中心に、相続に関する相談、不動産に関する事案について訴訟や調停に関しての相談、セミナー講師や海外不動産に関する業務など多岐にわたる内容に対応しています。
公益社団法人日本不動産士協会連合会会員、在日米国商工会議所(ACCJ)会員
名古屋地方裁判所民事調停委員、愛知大学非常勤講師
保有資格:不動産鑑定士
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