新社会人の皆さんへ FPの立場から生命保険のアドバイス:マネーの達人(4/4 ページ)
新社会人の皆さんに生命保険についてのアドバイス。本稿では、生保についての大切な知識と考え方をしっかり身に着けてもらえればと思います。
医療保険も実は必要ない!?
では、けがや病気に備えた「医療保険」には入った方がいいのでしょうか?
筆者は、医療保険への加入も基本的には不要と考えています。会社員であれば健康保険組合(中規模以下の会社であれば全国健康保険協会、いわゆる協会けんぽ)による、公的医療保険に加入しているはずです。けがや病気はもちろんのこと、入院をした場合でも、病院窓口で支払う自己負担の金額は医療費の3割になります。
また、1カ月の医療費の自己負担額は高額療養費制度によって上限が定められており、月額給与(標準報酬月額)が26万円以下であれば、保険医療費の自己負担額の上限は5万7600円(平成27年以降)ですみます。
確かに、民間生保の医療保険は「通常入院1日あたり1万円」といった定額の入院給付や所定の手術費用、特定の高度先進医療を受けた場合の高額な治療費(技術料)をまかなえるという安心は得られます。
ただ、そのようなケースに該当する可能性はそれほど高いとはいえず、長期にわたる保険料を毎月支払い続けるほどのメリットがあるかどうかは冷静に考える必要があります。
諸外国と比較しても、日本の公的医療保険制度はかなり充実しているということを踏まえると、民間の医療保険には加入せず、そのかわり毎月しっかりと貯蓄をしておくほうが賢明といえるでしょう。
以上、新社会人の皆さんに向けて、生命保険の加入の必要性について述べてきましたが、筆者は「民間の生命保険に加入する必要は全くない」と断言しているわけではありません。個人的な意見として必要性は低いと言わざるを得ないものの、皆さん自身が生命保険加入のメリットを保険料負担とともにしっかり理解した上で加入すべきかどうかを判断してください。
社会保障制度や生命保険、そして投資を含む資産形成について、今のうちからしっかり勉強を始れば、早い段階から正しい金融知力を持つことができるでしょう。そうなれば、家計管理の向上やライフプランの実現につながるでしょうし、日々の仕事にも大いに役立つことでしょう。(完山芳男)
著者プロフィール:
完山芳男
独立系FP事務所「FPオフィスK」代表。
米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)。
慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。
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