三菱自の益子会長は正しい決断をした(4/4 ページ)
三菱自動車の燃費データの不正計測・公表問題をきっかけに、日産が三菱自へ第三者出資することで傘下に収めることになった。
この社内の抵抗感が一挙になくなっていたのが今回のタイミングだ。通常なら強烈な抵抗を示すはずの経営者OBへの根回しも不要だったろう(そもそも機密情報管理という観点から無理か)。ある意味、今回の燃費データ不正問題は日産との資本提携を成立させるために千載一遇の機会にもなったのだ。
無論、日産傘下入りだけで三菱自を取り囲む状況が急に好転するわけではない。先に指摘したように、業績悪化はむしろこれから深刻化しよう。本来罪のない大半の社員は、これからつらい時期を耐え忍ばねばならない。
再建に向けて彼らが何とか気持ちを切らさずに仕事を誠実にやり続けるために最低限必要なことは、その頑張りが無駄に終わらないと信じることができることだ(これがない場合、人間というものは意外とたやすくパニックもしくは投げやりな気持ちに陥ってしまうものだ)。少なくとも日産傘下に入ることで、そう簡単には倒産しないという最後のよりどころを社員に与えることができ、益子会長はほっとしたはずだ。
そして肝心なことだが、この燃費不正問題をもたらした根本原因である「燃費競争に勝ち抜くだけの技術者と技術資産が三菱自には不足している」という問題が、傘下入りした日産からの技術者派遣で(少なくとも中期的には)かなり解消する可能性が高いことだ。
日産からの第三者増資を発表した記者会見で、益子会長が真っ先に言及した提携の期待成果が日産からの技術者派遣だったのが、彼の頭の中を占めていた自社のボトルネックのありかを示していると、小生には思えた。
今回、益子会長は経営者として正しい決断をした。日産との資本提携が完了し日産からの役員を受け入れたのち、彼は経営から退くことを言明している。自社の「うそつき体質」を変革できなかった罪は消えないとはいえ、最後に彼はすべきことをして引退する。拍手を送りたい。(日沖博道)
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