三菱自の益子会長は正しい決断をした(3/4 ページ)
三菱自動車の燃費データの不正計測・公表問題をきっかけに、日産が三菱自へ第三者出資することで傘下に収めることになった。
では、三菱御三家で大株主の残り1社、三菱東京UFJが救いの手を差し伸べるシナリオがあったろうか。同行は国内メガバンクの勝ち組であり、その収益レベルにはすさまじいものがある。
しかし三菱グループの中の一製造会社に対し、突出した支援を行うような筋合いもなければ、そんな浪花節もまったくない。三菱グループ全体にとって三菱自という存在は、救済するほどの価値すらないと考えていた節すらある。三菱電機や三菱地所など、三菱グループには優良企業かつ業績好調会社が少なくないが、彼らにとっても三菱自への支援を一部でも負担する義理はどこをどう突いても出てこない。
こうした三菱グループ内での孤立無援状況を益子会長は冷静に把握していたに違いない。自社の販売網を通じての販売は急減していた。そしてへたをして日産から提携を切られたら、もう三菱自には実質的倒産のあげくの(もっと悪い条件での)身売りという最悪の道筋しかなかっただろう。その事態を着実に逃れるための選択肢は日産の傘下入りしかなかったのではないか。
そこでへたにゴネて条件闘争に入ってしまっては、自社の窮状を深刻化させかねない。その結果、自社内は混乱し、販売店は戸惑い怒り、取引先は路頭に迷う…。その代わりに、益子会長が合理的判断に基づいて選んだのが電光石火の日産傘下入りだったと小生は考える。彼の脳裏には、鴻海と産業革新機構をてんびんに掛けたつもりでかえって鴻海の郭会長の手玉に取られた、シャープの高橋興三社長の姿が浮かんでいたのではないか。
それに益子会長も自社の長期的な事業継続性を考え、ゴーン社長と同様、過去に何度もこうしたシミュレーションをしていたのだろう。そして日産の傘下に入ることが妥当な行く末と考えていたのかもしれない。しかしその戦略におけるボトルネックは明らかに「社内の抵抗」だ。「俺たちは自社独立路線で行ける」という気概は大切だが、こと膨大な投資が必要な自動車事業における三菱自の現状ではもはや空念仏だったろう。
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