「角栄ブーム」で得をするのは、誰なのか:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
「角栄ブーム」の勢いが止まらない。石原慎太郎さんの『天才』は70万部を突破。昨年から書店だけではなくコンビニ本などでも刊行ラッシュが続いている。過去にも大物政治家ブームは何度かあったが、なぜこのタイミングで「角栄ブーム」が起きているのか。
毛沢東の功績を見直す背景
例えば、中国の「毛沢東ブーム」が分かりやすい。毛沢東については、1981年に中国共産党が、業績として評価すべき成果は7割で誤りは3割と定めるなど、中国の方たちの間でもかなりビミョーな存在だった。しかしその後、民主化を求める動きが活発となり、天安門事件が起きた1989年ごろを境に一気に再評価が始まるのだ。
『毛沢東主席生家もうでが復活したり、毛沢東を扱った本が人気を集めたり、“毛沢東回帰”とも言える現象が起きている』(読売新聞1990年1月30日)
その動きは現在にも受け継がれている。都市部と農村の格差が激しくなった2010年ごろには、陳情を求める人々が天安門広場の「毛主席記念堂」に行進しようとしたところ警察隊に阻止され拘束されるなど、『平等社会の実現を目指したと信じている「毛沢東」を掲げて、当局に抗議するケース』(産経新聞2010年12月29日)が加速度的に増えてきたのだ。
こういう「毛沢東ブーム」と「民衆の不満」の因果関係を見れば、小沢さんや佐高さんの分析には大いにうなずける。
ただ、そうなってくるとひとつの疑問が浮かぶ。中国で反体制の人々が「毛沢東」を掲げるように、体制批判のために特定の政治勢力が「田中角栄」を引っ張り出してきた可能性はないのか、という点だ。
卵が先か鶏が先か、みたいな話になってしまうが、国民の不満が角栄ブームを自然発生的に生み出したのではなく、何者かがブームを仕掛け、国民の不満を煽(あお)っていることだって考えられなくはない。
そんな陰謀論みたいなことを言うなと笑われるかもしれないが、過去を振り返ると、「政治家ブーム」というのは、特定の政治勢力の「追い風」になっているというケースが多々あるのだ。
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