「角栄ブーム」で得をするのは、誰なのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「角栄ブーム」の勢いが止まらない。石原慎太郎さんの『天才』は70万部を突破。昨年から書店だけではなくコンビニ本などでも刊行ラッシュが続いている。過去にも大物政治家ブームは何度かあったが、なぜこのタイミングで「角栄ブーム」が起きているのか。
なぜか吉田茂ブームが起きている
例えば、今回のブームの主役・田中角栄が「今太閤」呼ばれて国民的人気を誇っていた1972年、ある過去の大物政治家が注目を集めていた。吉田茂だ。
ナベツネさんの先輩である元読売新聞記者の政治評論家・戸川猪佐武氏が1971年から『小説吉田学校』(学陽書房)を刊行したのだ。「吉田十三人衆」の一人であった角栄にとって、この「吉田茂ブーム」が追い風にならないわけがない。
その後、ロッキード事件で角栄は失脚してしまうが、「吉田茂ブーム」は『小説吉田学校』の10年に及ぶ刊行ペース同様に1970年代後半までしぶとく続く。そこで恩恵を受けたのが、お孫さんの麻生太郎・財務相だ。
麻生さんが初出馬をしたのは1979年。『小説吉田学校』が、「孫」のブランディングに役立ったというのは容易に想像できる。その後、自民党青年局局長に就任するなど自民党でメキメキと頭角を現し始めた1981年には、まるでタスキをつなぐかのように、戦前戦後の政治の舞台裏を描いた勝田龍夫氏の『重臣たちの昭和史』(文藝春秋)が話題となり、再び吉田茂にも注目が集まる。
そんなの偶然でしょと思うだろう。確かに、偶然なのだと思う。が、その一方で麻生さんがここぞという大一番の前には、「吉田茂」というブランドをフル活用していたのも事実だ。
2001年4月、麻生さんは自民党総裁選に初出馬した。小泉純一郎、橋本龍太郎と争って敗れはしたものの、次世代の自民党を支える人物として注目を集めた。この転機となった大一番からさかのぼること1年、麻生さんはある本を出している。『祖父・吉田茂の流儀』(PHP/2000年05月22日刊行)だ。
さらに言えば、このあたりから吉田茂の側近だった白洲次郎のブームも始まる。麻生さん自身も、総裁選後のインタビューで、そんな「人気者」と自分の関わりについてしっかりと言及をしている。
『おやじが昭和十二、三年にイギリスへ遊びに行き、そのときの大使が吉田茂で、その娘と引き合わせたのが白洲次郎。当時二十五歳で、おふくろは「売れ残り」っていってました』(産経新聞2001年5月27日)
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