「角栄ブーム」で得をするのは、誰なのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
「角栄ブーム」の勢いが止まらない。石原慎太郎さんの『天才』は70万部を突破。昨年から書店だけではなくコンビニ本などでも刊行ラッシュが続いている。過去にも大物政治家ブームは何度かあったが、なぜこのタイミングで「角栄ブーム」が起きているのか。
何者かが「政治家ブーム」を仕掛けていた
その後も白洲次郎ブームは続き、2005年7月には『占領を背負った男』(講談社)が刊行。「マッカーサーを前に一歩も引かなかった男」という日本の国益を守った交渉人のイメージが一気に広まった。では、そのころの麻生さんはどうかというと、外交の最前線で国益を守る外務大臣に就任。さらに、翌2006年9月には2度目の自民党総裁選出馬をしている。
2008年9月に麻生さんが内閣総理大臣に就任しても、白洲次郎関連本は世にあふれ、2009年2月にはついにNHKで連続ドラマ化もされる。白洲次郎ブームと、政治家・麻生太郎の歩みが妙にかぶってしまうのだ。
もちろん、麻生さんが自身のブランディングで吉田茂ブームを仕掛けたなどというつもりは毛頭ない。ただ、麻生さんを応援し、首相になってもらいたいと考える人々が仕掛けた可能性はある、と思っている。
特にマスコミには、ナベツネさんを例に出すまでもなく特定の政治家とズブ……もとい昵懇(じっこん)の間柄となっている方も多い。その中の「麻生シンパ」が援護射撃をしようとしたらどうするか。「吉田茂」「白洲次郎」を引っ張り出し、戦後民主主義の正当な後継者だというアピールに利用しようという者がいても不思議ではない。
すべては仮説に過ぎないのだが、この麻生政権では非常に興味深い現象も起きている。「吉田茂」や「白洲次郎」のブームと並行して、一部メディアが、彼らと対極に位置するような政治家のブームを仕掛けているのだ。
それは田中角栄だ。
覚えている方も多いかもしれないが、2008年後半は一部メディアで「いまこそ田中角栄流」「角栄政治にヒントがあった」なんて特集がよく組まれた。
『週刊ポスト』では田中元首相が蔵相時代の政策を例に挙げ、現在の不況対策としても通用すると提言し、同じく小学館の『SAPIO』では27ページにも及ぶ大特集を組んだ。TBSの情報番組でも田中角栄が取り上げられてきた。
ご存じのように、この時期は民主党が最も輝いていた。田中角栄の秘蔵っ子・小沢さんも「豪腕」として恐れられ、麻生さんの帝国ホテルのバー通いや、読み間違えが恥ずかしいだとかいろいろ攻撃をしていた。
関連記事
- 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.