「角栄ブーム」で得をするのは、誰なのか:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
「角栄ブーム」の勢いが止まらない。石原慎太郎さんの『天才』は70万部を突破。昨年から書店だけではなくコンビニ本などでも刊行ラッシュが続いている。過去にも大物政治家ブームは何度かあったが、なぜこのタイミングで「角栄ブーム」が起きているのか。
いったい誰が得をするのか
この一部メディアの「角栄ブーム」からほどなくして行われた衆院選で自民は歴史的大敗。民主党が政権を奪取した。「吉田茂ブーム」によってその血筋と国際感覚をアピールしてきた麻生さんが、「田中角栄ブーム」とともに台頭した民主党によって最高権力者の座を奪われる。そこになにかしらの「メッセージ」があるのではないかと勘ぐってしまう。もちろん、単なる偶然なのだろうが。
そういう過去を振り返ると、夏の参院選を前に、8年ぶりの「角栄ブーム」が盛り上がりをみせているというのは非常に興味深い。
誰が見ても、「育ちのいいお坊ちゃん」である安倍首相のイメージにマイナスにこそなれ、プラスになるわけがない。二世議員か地方の小金持ちがゴロゴロしている今の政治家の中で、角栄ほどのたたき上げは、ダンボール工場で働いて大学まで通った菅義偉官房長官くらいしかいない。
いずれにせよ、直近の「角栄ブーム」の後に、大きな政変が起きたのはまぎもれない事実だ。この勢いなら、夏の総選挙までには『天才』も100万部を超えているかもしれない。
今太閤ブームで、いったい誰が得をするのか。そして今度は誰が葬り去られるのか。注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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