コンビニ「家主」のトラブルあるある:コンビニ探偵! 調査報告書(1/3 ページ)
コンビニオーナーは、店舗の経営権はあっても自分で土地や建物所有しているわけではない。コンビニ本部と土地や建物の所有者である「家主」が賃貸借契約を結んでいることがほとんどだ。今回は、コンビニの「家主」について解説しよう。
コンビニ探偵! 調査報告書:
「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」……だけど、タフであり続けることも、優しくあり続けることも、簡単ではない。
ほとんどの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。ニュースやデータからコンビニで何が起きているのかを、推理して、調査して報告します。筆者は大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?
「コンビニオーナー」と聞いて、読者のみなさんがまず思い浮かべるのは、店を経営しているオーナー店長のことだろう。しかし、多くのオーナーはコンビニ本部が用意した物件の経営権を契約しているだけで、自分で土地を持っているわけではない。
では、その店は本部の持ち物なのかというと、そうではない。土地のみ、もしくは土地建物の所有者である「家主」が、コンビニ本部と賃貸借契約を結んでいるのだ。
今回は、コンビニの「家主」について解説しよう。
それっぽい土地や建物があるだけでは「家主」になれない
コンビニ本部と家主の間に交わされる契約には、いくつかのタイプがある。まずは、一般的なフリースタンディング店舗の家主について説明しよう。
フリースタンディング店舗とは、店舗の建物が独立した路面への出店形式のことを指し、駐車場のあるコンビニなどがそれにあたる。ローソンの募集ページが分かりやすいので、参考までにご覧いただきたい。
このように、本部との契約には「土地だけを貸す」、もしくは「店舗を作って貸す」などがある。地域や形態によっても賃料は変わるが、一般的に土地だけ貸すタイプは賃料が安い。そういう点は、賃貸住宅と変わらないだろう。
家主は、土地および建物を用意した上でコンビニ本部と賃貸借契約を交わす。「それっぽい土地や建物がある」というだけで家主になれるわけではないのだ。
コンビニが完成するには、看板を設置するための下地や要冷機の設置などいろいろと手を加える必要がある。具体的には、壁紙は本部の負担、コンビニ特有の広いウィンドウやサインポールを立てる下地などは家主側で負担することになっている。このように、細かく定められた費用区分に従い、それぞれが建物や設備を用意するという流れだ。
資金不足の家主用に「建設協力金」という制度も用意されているが、資金がもらえるわけではない(下図参照)。これはオーナー契約と同様、交渉の余地はない。
店舗のメンテナンスについても、負担区分がきちんと決められている。筆者が本部の社員だったころ、担当していた店舗の家主の許可が下りず、メンテナンスができずいたことも少なくなかった。そういうときはオーナーと家主との間で板挟みとなり、さんざん苦しめられたものだった。
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