コンビニ「家主」のトラブルあるある:コンビニ探偵! 調査報告書(3/3 ページ)
コンビニオーナーは、店舗の経営権はあっても自分で土地や建物所有しているわけではない。コンビニ本部と土地や建物の所有者である「家主」が賃貸借契約を結んでいることがほとんどだ。今回は、コンビニの「家主」について解説しよう。
本部にとって都合のいいコラボ物件
さて、コンビニ本部は今後も個人家主と契約を結び続けるのだろうか。大手3社は店舗拡大に鼻息が荒いが、いわゆる“優良立地”はあまり残されていない。各社がここぞとばかりに群がった結果、人通りの多いところ、クルマの交通量が多いところ――といった立地はすでにコンビニが押さえている。では、どうやって店舗を拡大させていくのか。
コンビニ大手3社の「物件募集」のページを見ると、1つの共通点がある。賢明な読者はお気付きかと思うが、全面に掲げているのは、企業ビルや病院、複合施設などとコラボした物件だ。
先に紹介した、個人家主とのワケの分からないトラブルの回避策として「ビジネスライク」がある。その対象として最も都合がいいのが、複合施設への出店や企業体とのコラボ物件というわけだ。もちろん、コンビニ需要としてそれらの物件が注目され、出店ノウハウも積み重なってきた時代背景が大きいということもあるだろう。
もう1つ、法人とつながることでコンビニ本部にとって良いことがある。それは、オーナー問題だ。現在のオーナー不足は深刻な状況である。そこで、店舗を企業内や施設の複合とすることで、企業や施設側に店長を用意してもらう。
以前から、数店舗をまとめて法人として契約し、運営を行うパターンがある。それを少し進展させた形だ。店舗を企業内、施設内に設ける。そして、運営自体も企業・施設に委ねるのだ。
筆者のように突然「辞めるぞ」というオーナーがいると、本部は後始末に追われてしまう。店を存続させるかどうか。存続させる場合、後釜のオーナーをどうするか。しかし、運営自体を企業に委ねたら、それは企業が勝手にやってくれる。単なる人事異動問題に変わるからだ。
個人家主と違って、法人相手はワケの分からないことは言ってこないだろう。しかし、相手はプロ。出店の際、あれやこれやと要望を突きつけられることが予想されるので、コンビニ本部もこれまでのように簡単に契約を結ぶことができなくなるはずだ。
そうなると、コンビニ本部の「交渉力」が今後の店舗拡大のカギを握ってくるのではないだろうか。エキナカ、病院などでコンビニをよく目にするようになったが、これまでの実績から言えば、やはりセブン-イレブンが一歩リードしているのかもしれない。今後の動向に要注目である。
著者プロフィール・川乃もりや:
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
関連記事
- どのくらいもらえるの? コンビニの収入事情
コンビニオーナーの収入はどうやって決まるのだろうか。フランチャイズ契約における計算方法は複雑で、きちんと理解している人は少ない。今回は、収入の計算方法をフランチャイズ契約の現実も交えて説明する。 - お化け屋敷よりも怖い? コンビニの“骨肉の争い”
コンビニで“嫌がらせ合戦”が繰り広げられている。どういうことか? 筆者の川乃氏によると、同じチェーンのお店で嫌がらせが起きているという。具体的には……。 - 増え続けるコンビニに“限界”はあるのか?
囲碁の陣地取りのようにすき間があれば出店し、現在も増え続けるコンビニ。店舗数合戦を繰り返したところで、経営状態が悪くなれば増え続けることは不可能なのだが……。今回は、コンビニ店舗数の限界について考えてみる。 - えっ、山梨県がまさかの2位? 都道府県別にコンビニを分析してみた
コンビニ経営から離れてしばらくたつが、都道府県別にコンビニの店舗数を定期的にデータ化している。ふと、これを他のデータと比較したらどうかと思い、いろいろ試してみたところ、意外なことが見えてきた。 - たいして儲かっていないのに、コンビニが「24時間営業」を止められない理由
今や、ほとんどのコンビニが24時間営業だ。いつでも開いていて便利な一方、さまざまな問題が生まれている。今回は、24時間営業のコンビニが抱えるジレンマについて調査した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.