三菱東京UFJ銀行が、もう国債を買わないって本当?:マネーの達人(3/5 ページ)
三菱東京UFJ銀行が「国債市場特別参加者資格」を国に返上しました。今回はその資格と、それを返上することで国債に与える影響についてお話しします。
マイナス金利とは
では、マイナス金利政策が導入され、銀行は国債運用で損を強いられているのでしょうか。それを考える上で、次はマイナス金利をおさらいしましょう。
マイナス金利は、銀行が日銀に預ける当座預金に対してマイナス金利をつける、つまり、お金を預けたら手数料を取るよという制度です。しかし、金融機関の預金全てにマイナス金利が適用されるわけではありません。
金融機関の資金を三段階に分け、その一部にしかマイナス金利は適用されません。現在、銀行は当座預金に約230兆円を預金しており、法定準備金部分を差し引いた残高は221兆円。そのうち、2015年の平均残高分の超過分18兆円程度にマイナス金利が適用になります。つまり、マイナス金利を導入したからといって、直ちに国債での運用が損をするというわけではないのです。
2015年の平均残高はマイナス金利適用外です。新発債を買わなければマイナス金利は適用になりません。市場から国債を買えば日銀が買ってくれるので、それだけでも十分に利ざやを稼ぐことができます。
従って、マイナス金利になったから銀行が国債での運用をしなくなったというわけではないのです。マイナス金利の導入で、私たちの預金もマイナス金利になることはありません。
中には、マイナス金利をやたらと強調してリスク資産への誘導を説く人もいますが、そのロジックは決して正しいとは言えないでしょう。銀行に預けていてもお金が増えないからといって、運用を勧めるのは間違いです。ましてやマイナス金利導入をもって運用へ誘導するのは、どう考えても営業トークにしか思えません。
運用には必ずリスクが伴い、それを許容することが大事なのです。「なぜリスクを許容しなければならないのか」を十分に理解して資産運用をはじめないと、必ず大ケガをします。
銀行に預けていてもお金が増えないから、マイナス金利になったから資産運用をしようというのは、完全な営業トークです。リスクを前面に出すと、誰も資産運用をしなくなります。
繰り返しになりますが、資産運用で大事なのは、リスクを受け入れることです。将来の生活設計を考える上で、いまリスクをとらないと大変なことになるので、真剣にリスクと向き合う気持ちで資産運用を選択するという強い意志が必要です。リスクを受け入れるご褒美としてリターンが得られるのです。そうすれば、大きな損は招かないと思います。
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