これから「英プレミアリーグが“氷河期”に陥る」話:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)
国民投票の結果を受け、英国のEU離脱が確実となった。これにより大きな影響を受けることになりそうなのが、イングランド・プレミアリーグだ。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
一体どうなってしまうのか。国民投票の結果を受け、英国のEU離脱が確実となった。これにより大きな影響をモロに受けることになりそうなのが、イングランド・プレミアリーグだ。言わずと知れた英国の世界最高峰・プロサッカーリーグはEU離脱によって、さまざまな弊害が生じることが懸念され始めている。
その筆頭がEU加盟国国籍の選手が外国人扱いとなってしまう点だ。1995年12月に欧州裁判所の下した「ボスマン判決」以降、EU加盟国の国籍を有する選手は自国籍扱いとなっていたが、EU離脱となると英国政府発行の就労ビザが必要になってくる。
プレミアリーグでプレーする上で外国人選手に求められるビザ取得の条件は高い。「直近2年間の国際Aマッチ(年齢制限のないA代表チーム同士の国際公式試合)に75%以上出場」に加え「母国がFIFA(国際サッカー連盟)ランキングで70位以内に入っていること」が基本条件で、これらがクリアできていないとビザは下りない。我々日本人に身近なケースを挙げれば、2002年8月に元日本代表のMF三都主アレサンドロの獲得に当時プレミアリーグのチャールトンが動いたものの、ビザが発行されず破談になったことがある。
英国のBBC放送によれば「EU加盟国の国籍を保有するプレミアリーグ所属選手のうち、本来はビザ取得の基準を満たさないプレーヤーは100人以上いる」という。
今季優勝を遂げたレスター・シティFCで大ブレイクし、現在有力クラブ間で争奪戦となっているMFエンゴロ・カンテや、ウェストハム・ユナイテッドFCのMFディミトリ・ペイェらは今でこそ母国フランスの代表チームで常連だが、プレミア移籍当時は代表歴が浅く“EUの恩恵”がなければビザ取得ができず移籍は不可能だった。
ちなみに2003年8月にプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドへ移籍したクリスティアーノ・ロナウド(現レアル・マドリード=スペイン・リーガ・エスパニョーラ)も、その契約当時は母国ポルトガルのA代表に召集歴がなかった(同年8月20日にA代表デビュー)にも関わらずビザ取得が免除されている。つまりEU離脱によって、将来的に世界的なスーパースターになりうる他国逸材選手の青田買いもできなくなるということだ。
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