これから「英プレミアリーグが“氷河期”に陥る」話:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
国民投票の結果を受け、英国のEU離脱が確実となった。これにより大きな影響を受けることになりそうなのが、イングランド・プレミアリーグだ。
有力選手たちがプレミアリーグを離れていく可能性
サッカーのイングランド代表チームは近年、国際大会のタイトルとは完全に無縁で目覚ましい成績を収めていない。6月27日に行われたユーロ2016決勝トーナメント1回戦でもアイスランドに敗れた。不甲斐ない成績が続く背景に、プレミアリーグにおいて自国民選手がなかなか活躍できない環境があるから――というのが、年配層サポーターたちの共通認識である。それならば自国民プレーヤーたちにとって足かせとなっている“EUの恩恵”なんて取っ払ってしまえという主張だ。
だが、この主張は限りなく危険と言わざるを得ない。プレミアリーグがドイツのブンデスリーガ、イタリアのセリエA、フランスのリーグ・アン、スペインのリーガ・エスパニョーラなど欧州各国の有力プロリーグを抑えて「世界最高峰」と呼ばれるようになったのも、前出のボスマン判決以降の話。テレビ放映権の高騰によって莫大な収入を得るようになったプレミアのビッグクラブが次々にEU加盟国の有力選手を“乱獲”したことにより、一気に世界的なネームバリューを広げていったのである。
この構図を理解していないと、近年に築き上げたプレミアリーグの隆盛は音を立てて崩れ去る危険性もはらんでいる。EU離脱の影響によって有力選手がプレミアリーグからスター選手や、その金の卵と目されるプレーヤーたちが次々と離れていけば、当然のように魅力はグンと下がってしまう。放映するテレビ局やバックアップしていたスポンサー企業も撤退し、プレミアリーグに氷河期が訪れるという悪夢のシナリオも想定しなければならないだろう。
そんな事態に陥るとなると、いくら自国民選手にプレーのチャンスが多く舞い込んだとしても所詮は「井の中の蛙」でレベルアップなど期待はできまい。
しかも国民投票で「EU離脱」の判断が下されたことによって、今後しばらくは自国通貨のポンド安、それに対してユーロ高の状況が続くことが予想される。そうなると、ユーロ高で高利益の得やすい他のEU加盟国のプロリーグに多くの優秀な選手が集まりやすい環境が作られ、ひいては英国の有力選手たちもプレミアリーグを離れていく可能性が高くなる。こんなことになってしまったら、プレミアリーグにとっては最悪だ。
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