「ベーシック・インカム」は日本を元気にする秘策になるか:マネーの達人(5/5 ページ)
社会保障の1つに「ベーシック・インカム」という考え方がある。ベーシック・インカムとは、政府が全国民に最低生活保障として一定の現金を支給する政策のこと。今回は、日本を元気にする秘策として堀江貴文氏も提唱していたベーシック・インカムについて説明しよう。
社会保障と税の一体改革について議論すべき
社会主義的な色彩の強い政策なので、今の日本の政治体制、少なくとも自民党政権が続く限り、ベーシック・インカム制度が導入される可能性はかなり低いと言えるだろう。また、現行の公的年金制度で多大な恩恵を受けている高齢者層は、年金受給額が減る可能性があるベーシック・インカムの導入に大反対することは想像に難くない。
しかし、いずれ大幅かつ抜本的な社会保障制度の改革が迫られるのであれば、最低所得保障の考え方を取り入れ、あまねく国民にお金を配るベーシック・インカム的な発想は大きな意義を持つだろうと筆者は考えている。
かつて、民主党が2009年衆議院選挙のマニフェストで、公的年金制度の改革案として「最低保障年金」という看板政策を掲げていた。民主党政権は3年半という短命で終わったため年金制度改革は全く進まなかったが、この最低保障年金という考え方はベーシック・インカムに近い概念であった。
財源問題を含めベーシック・インカムの導入には課題が多く、税制を含めた大改革を実現するためには、10年単位の長い移行期間も必要となろう。「社会保障と税の一体改革」について国民的議論が再び活発化することを願いたい。
4月に放送されたテレビ番組『そこまで言って委員会NP(読売テレビ)』で、ホリエモンこと堀江貴文氏が、日本を元気にする秘策として、ベーシック・インカムの導入を提唱していたことは傾聴に値する。(完山芳男)
著者プロフィール:
完山芳男
独立系FP事務所「FPオフィスK」代表。
米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)。
慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。
関連記事
- 起業家にベーシック・インカム 岩手県遠野市が実験導入
Next Commonsと岩手県遠野市は、起業家に対して「遠野市に住民票を移すこと」などを条件に3年間のベーシック・インカムを導入するプロジェクトを始める。 - 働かなくてもお金がもらえる……ベーシックインカムに賛成しますか
すべての人に毎月最低限の生活費を支給する「ベーシックインカム」制度。この制度についてブロガーのちきりんさんとフリーライターの赤木智弘さんはどのような考えを示したのだろうか。 - 新社会人の皆さんへ FPの立場から生命保険のアドバイス
新社会人の皆さんに生命保険についてのアドバイス。本稿では、生保についての大切な知識と考え方をしっかり身に着けてもらえればと思います。 - 新社会人の皆さんへ FPの私からお金のアドバイス
本コラムでは、新社会人の皆さんに向けて、マネーや資産運用、ライフプランなどについてアドバイスさせていただきます。
関連リンク
copyright (c) "money no tatsujin" All rights reserved.