どこが違うのか クルマと鉄道の「自動運転」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
自動車の自動運転技術が進化している。先日の自動運転車の死亡事故は残念だけど、技術だけではなく、法整備や倫理観へ議論を進めるきっかけとなった。ところで、鉄道の自動運転を振り返ると、半世紀以上の歴史があるにもかかわらず関連法では「特例扱い」のままだ。鉄道の自動運転は、長年にわたって築かれた安全技術の上に成立しているからだ。
鉄道の自動化、無人運転までの歴史
クルマの運転自動化については、国土交通省が次のように分類している。これはNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が2013年5月30日に公表した一次政策方針に基づく。
レベル0 自動化なし
常時、ドライバーが、運転の制御(操舵、制動、加速)を行う。
レベル1 特定機能の自動化
操舵、制動または加速の支援を行うが操舵・制動・加速の全てを支援しない。
レベル2 複合機能の自動化
ドライバーは安全運行の責任を持つが、操舵・制動・加速全ての運転支援を行う。
レベル3 半自動運転
機能限界になった場合のみ、運転者が自ら運転操作を行う。
レベル4 完全自動運転
運転操作、周辺監視を全てシステムに委ねるシステム。
これを鉄道になぞらえる。鉄道は線路があって、運転士の操舵操作は不要。だから鉄道は自動運転レベル0をスキップし、レベル1から始まったと言える。
制動(ブレーキ)の支援をATS(自動列車停止装置)の実装とするなら、1927年の地下鉄銀座線から始まった。加速の自動化はATO(Automatic Train Operation:自動列車運転装置)の実装で始まる。この段階で鉄道は自動運転を可能とした。ただし、運転士が乗務して機器を監視し、緊急対応を実施する。レベル2とレベル3が同時に達成されたと言える。
日本初のATOは名古屋市営地下鉄で、1960年に試験的に運用され、1年半で終了している。その後、大阪市営地下鉄、営団地下鉄などでも長期試験が行われた。実用化は1970年の大阪万博会場内モノレール。恒久的な営業運転への導入は神戸市営地下鉄西神線で、1977年からだったという。それから4年、冒頭のように、1981年からポートライナーで無人運転が始まった。レベル4の達成だ。
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