どこが違うのか クルマと鉄道の「自動運転」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
自動車の自動運転技術が進化している。先日の自動運転車の死亡事故は残念だけど、技術だけではなく、法整備や倫理観へ議論を進めるきっかけとなった。ところで、鉄道の自動運転を振り返ると、半世紀以上の歴史があるにもかかわらず関連法では「特例扱い」のままだ。鉄道の自動運転は、長年にわたって築かれた安全技術の上に成立しているからだ。
自動運転は既存の保安装置の延長にある
興味深いのは、無人運転を実施するに当たり、法律の改正などが見られなかったことだ。当時、開業に当たる法的根拠は地方鉄道法と軌道法だった。専用敷地に線路を敷く場合は運輸省(当時)の地方鉄道法の免許が必要で、道路と一体整備する部分は軌道法の特許が必要になる。どちらも路線の認可と廃止の手続きなどを定めているけれども、運転に関しては「最高速度を定めよ」程度だ。
また、それぞれの法律には省令で施行規則が定められている。地方鉄道法では第20条に自動列車運転装置という文言が追加されたけれども、これは保安装置を設置する際に図面も添えて申請せよという条文で、自動列車停止装置などに追加された程度。軌道法では第9条が該当するけれども、自動列車運転装置の文言はない。自動列車運転装置は既存の保安装置の延長にあったようだ。
さらに探すと、現行法令では鉄道営業法に基づく「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」において以下のように定められていた。
第百二条 動力車を操縦する係員は、最前部の車両の前頭において列車を操縦しなければならない。ただし、列車の安全な運転に支障を及ぼすおそれのない場合は、この限りでない。
原則として運転士は先頭に、例外として不在でも良し。これで無人運転が認められている。そしてこの省令はポートアイランド線開業のずっと後、2001年に発令された。既に複数の路線で無人運転を実施中だったから、実態に即して作られた条文と言える。
無人運転の法的根拠が定まっていなかったとはいえ、国が放任していたわけではない。新交通システムについては1960年代から欧米で研究開発が始まっていて、日本でも1966年から事業の可能性を探る動きがあった。1970年に神戸ポートアイランドで導入が検討されると、運輸省と建設省は「新交通システム開発調査委員会」を設置して具体的な調査検討を実施している。
ポートアイランド線は、その調査検討の結果を受けて1977年に認可申請が行われ、1981年に開業した。乗客安全ではさらに強化され、日本で初めてホームドアが設置された。ホームは床から天井までガラス張りで、うっかりどころか故意でも線路に立ち入れない。さらに、監視カメラなどで各所を監視し、列車運行、駅の管理などを中央指令室でコントロールする。その意味では、無人運転ではあるけれど、自律運転ではない。
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