鳥越俊太郎さんが「出馬はペンより強し」になった理由:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
ジャーナリストの鳥越俊太郎さんが東京都知事選に出馬した。「えっ、ジャーナリストが立候補!?」と思われたかもしれないが、報道に携わった人たちが立候補し、当選したケースは多い。「ジャーナリスト=権力を批判」というイメージが強いのに、なぜ彼らは立候補するのか。
民進党は「ジャーナリスト候補」に依存
では、なぜ民進党は「ジャーナリスト候補」に依存してしまうのか。
「そんなもん反日マスゴミと癒着してるからだ、以上!」なんて怒りの声が聞こえてきそうだが、そういう陰謀論的な理由ではなく、実は「浮動票の取り込み」という戦略面の意味が強い。
自民党候補者は地域の組織票をガッチリと抑えている中で、労組以外にパッとしない民進党としては、「浮動票」を獲得していくしかない。それは分かりやすく言えば、普段は政治にほとんど関心のない人たちに「難しい話はよく分からないけど、この人ならなんかやってくれそう」と思わせるような「好感度の高い候補者」を立てるということだ。
そういうとき、経営者とか医者とか教師よりも実は最も適しているのが、「テレビ・新聞出身のジャーナリスト」なのだ。なぜか。日本人が「テレビや新聞を世界一信用している国民」だからだ。
各メディアの情報をどのくらい信頼しているかと聞いたところ、平均点が最も高かったのは「NHK」で71.1点(2014年メディアに関する全国世論調査)。次いで「新聞」が69.2点、「民放テレビ」も60.2点となっている。
ま、全体的にはそんなもんじゃないのと思う人もいるかもしれないが、実はこの信頼度は世界的にみるとかなり「異常」と言わざるをえない。
例えば、米国の調査機関ギャラップ社が実施した2014年の調査によると、新聞を信頼している米国人は22%しかいない。テレビニュースにいたっては19%とネットニュース(18%)と同程度の信頼感しかないのだ。この傾向は他の先進国も同様だ。2010年期の世界価値観調査で英国、フランス、ドイツの新聞・テレビの信頼度は、10〜40%にとどまっている。これは国民がメディア不信に陥っているというよりも、「報道を鵜呑みにせず自分で判断せよ」というメディアリテラシー教育が日本より浸透していることも大きい。
そういう国と異なり、「テレビや新聞はとにかく信用できる」という国民が多い日本で、組織票の弱い政党が選挙で勝ち抜こうと考えたらどうすればいいか。「テレビ・新聞出身ジャーナリスト」の神通力に頼ろう、という発想になるのは当然だろう。それを雄弁に物語っているのが、民進党の「NHK記者」の多さである。
国体委員長を務められる安住淳さんはNHKの政治部記者。現在、鳥越さんとともに街頭演説に随行する柿沢未途さんもNHK記者だったし、みんなの党、維新の党を渡り歩いた井出庸生さんもそうだ。もうお辞めになったが、厚労相も務めた小宮山洋子さんはNHKの解説委員。旧社会党組で経済産業副大臣、財務副大臣などを歴任した池田元久さんもNHK記者だった。自民党にも竹下亘さんなどNHK出身者はいるが、比べものにならないほど多いのだ。
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