鳥越俊太郎さんが「出馬はペンより強し」になった理由:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
ジャーナリストの鳥越俊太郎さんが東京都知事選に出馬した。「えっ、ジャーナリストが立候補!?」と思われたかもしれないが、報道に携わった人たちが立候補し、当選したケースは多い。「ジャーナリスト=権力を批判」というイメージが強いのに、なぜ彼らは立候補するのか。
ジャーナリズムの重要な役割
世界のメディア、ジャーナリズムレベルを比較分析したWorlds of Journalism Study(WJS)というプロジェクトがある。日本からは日本大学が参加して、747人のジャーナリストを対象に調査を行ったのだが、そこで日本のジャーナリスト特有のカラーがくっきりと浮かび上がっている。
さまざまな国で、ジャーナリズムの重要な役割概念は何かということでさまざまな質問をした中で、「観察者に徹する」ということを重要視する国が多いという結果が出た(以下、『2013年版「日本のジャーナリスト調査」を読む』から引用)。
オーストラリアの96%を筆頭に、ドイツ(89%)、米国(82.8%)、スペイン(82%)と西側諸国ではほとんどのジャーナリストが「観察者たれ」と心掛けていることが分かる。ブラジル(85.9%)、中国(79.2%)、ロシア(70.1%)、インドネシア(62.9%)でもジャーナリストたちの「常識」となっているような数値だ。
だが、調査の参加した国の中で際立って「ジャーナリストは観察者たれ」という概念に否定的な国があった。
もうお分かりだろう、日本だ。「観察者に徹すべき」というのは43.9%。過半数のジャーナリストは自分たちのことを「観察者以上の存在」だと思い込んでいるのだ。
では、いったい彼らは自分たちを何者だと考えているのか。その答えは、同じ調査の中で「観察者に徹する」と全く逆の結果となった質問項目にある。
ドイツ(21%)、オーストラリア(19%)、スペイン(18%)と総じて少数派で、米国にいたっては11%と西側諸国が低く、ロシア(35.1%)、ブラジル(24.2%)、インドネシア(41.4%)、エジプト(43.4%)、中国(45.1%)という「報道の自由」に制約のある国になればなるほど高くなっており、日本が60.3%とダントツに高い。
それは、「政治的議題を設定する」ということだ。
西側諸国では、政治的イシューは政治家が決めるという考えがあるが、日本では「戦争法案」とか「保育園落ちた、日本死ね」のようにマスコミが取り上げたことが政治的課題になり、それが国会の論戦にも影響を及ぼす。首相がナベツネさんのようなマスコミトップと会食を繰り返して、意見交換をするという世界でも極めて珍しい「権力とメディアのテーマ調整」が行われるのはそのためだ。
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