鳥越俊太郎さんが「出馬はペンより強し」になった理由:スピン経済の歩き方(6/7 ページ)
ジャーナリストの鳥越俊太郎さんが東京都知事選に出馬した。「えっ、ジャーナリストが立候補!?」と思われたかもしれないが、報道に携わった人たちが立候補し、当選したケースは多い。「ジャーナリスト=権力を批判」というイメージが強いのに、なぜ彼らは立候補するのか。
政治プレイヤー型ジャーナリスト
実はこの傾向は、戦前から脈々と受け継がれてきた「伝統」でもある。
日露戦争開戦に迷う元老の山縣有朋を、外務省の依頼で口説き落としたのは朝日新聞の「近代的エディターとしての主筆」の先駆けといわれる池辺三山。日本ではジャーナリズム黎明期から、記者は「観察者の枠を超え、政治家に働きかけて政治的課題を決定する人種」だと決められていた。
もちろん、それに満足できず記者から政治家になる人間が山ほどいた。犬養毅や原敬ももともと新聞記者だった。ただ、彼らがいた新聞は、大隈重信が買収した『郵便報知新聞』だったりという政府の機関紙だった。現代の我々の感覚でいえば、「ジャーナリスト」というよりも、『聖教新聞』や『赤旗』という「機関紙の記者」だったという考えた方がいい。
つまり、日本のジャーナリストというのは、近代に産声をあげたときから「政治プレイヤー」の一員だったのである。政治課題の設定が主な役割なので当然、主張は大衆ではなく政党に偏る。よく「偏向報道」という話になると、GHQが洗脳してうんたらかんたらというところにいきがちだが、実はマッカーサー様が乗り込んでくる前からとっくのとうに「偏向」をしていたわけだ。
そういう戦前のジャーナリストたちから薫陶(くんとう)を受け、「いいか、お前ら、観察者じゃなくてプレイヤーになれよ」と叩き込まれたのが戦後、新聞記者になられた鳥越さんたちの世代である。
鳥越さんは2006年、市民記者というシステムを導入したネット新聞『オーマイニュース』の編集長に就任されているが、その直前のインタビューでこのように述べられている。
『昔、先輩記者に「新聞記者とはなにか。最終的には、社会正義の実現にかかわることだ」と言われた。この言葉は印象的に今も残っている』(2006年5月27日 朝日新聞)
関連記事
- NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.