マツダとボルボがレストアプログラムを提供する意義:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
先週、幕張メッセで開かれたイベント「オートモビル カウンシル」で2つの話を聞いた。この取り組みは、今後「自動車文化」を本当に豊かにしていくかもしれない。
また面白いのは、このレストアプログラムが日本発だという点だ。実は筆者は、最初に話を聞いたとき、本国のプログラムを日本でも始めたのだなと思った。ところがそうではなかった。実はきっかけはボルボ・ジャパンの木村隆之社長にあった。木村社長はトヨタ、ユニクロ、日産と渡り歩いてボルボ・ジャパンの社長に就任した人だ。昔から古いクルマに興味があったが、ボルボ・ジャパンの社長に就任したのを機にボルボP1800を購入したのがきっかけになった。
余談だが、P1800はボルボ・アマゾンのクーペバージョンであり、ベースとなったアマゾンは世界で初めてシートベルトを装備したクルマ。ボルボの「安全」というコンセプトに大きな影響を与えた1台である。さて、木村社長はこのP1800を駆って、さまざまなイベントに出場し始めてその楽しさにすっかりハマってしまった。そうするうちに、ヒストリックモデルのケアを行うことはブランドイメージに大きな意味があるのではないかと考えたそうだ。こうして日本発のレストアプログラムがスタートしたのである。
この2つの事象をもって、効率を追求してきた経営の変化だと言い張るのはちょっと言い過ぎだと思う。ただし、無駄や非効率のないところに文化はない。効率化の方法はメソッドであって、カルチャーではないからだ。こういう1つずつの積み重ねによって、やがて日本にも違和感のない自動車文化が根付くかもしれない。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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