出光が恐れているのは何か、昭和シェルが嫌っているのは誰か:スピン経済の歩き方(4/4 ページ)
出光興産と昭和シェル石油の合併が難しくなっている。国内ガソリン市場が縮小する中で出光にとってシェルとの統合は決して悪い話ではない。それなのに、なぜ出光の創業家は合併に反対しているのか。
もう一度「店主」の言葉をかみしめて
昭和シェル労組の「組合の主張」に、「反戦平和」「憲法改悪に反対します」「原発に反対します」とあるように、沖縄の基地問題にも積極的に関わっていらっしゃる。機関紙『パイプライン』も、沖縄県民大会から、全労協脱原発集会から、国会前のデモまで紹介されている。
いわずもがな、このような「平和運動家」にとって百田氏ほど憎らしい相手はいない。そんな人物をもし本当に世論を動かそうとひっぱり出そうというのなら、ただでさえこじれている対立が、修復不能なほど決定的な亀裂になってしまうのではないか。
「大家族主義」を唱えた出光佐三氏は、実は「人類愛」を説いたことでも知られている。晩年にこんな言葉がある。
『お互いに仲良く和の力を発揮する。対立闘争なんかない、これだけです。だから諸君は、今後いかなる場合でも相手に対して、愛情をもってほしい』(出光Webサイト「創業者 出光佐三」より)
そんな理念はきれいごとに過ぎないと思うかもしれない。しかし、出光は全社員が45日間かけて佐三氏の理念を学ぶ「店主室教育」に代表されるように、なによりもその理念を大事にしてきたのではなかったか。
経営陣も創業家も、もう一度「店主」の言葉をかみしめていただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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