“手先が伸びて縮むだけ”のロボットが、「在庫ゼロ」になるほど売れている理由:水曜インタビュー劇場(ロボット公演)(4/7 ページ)
「ロボット」と聞けば、複雑な動きをするモノ――。といったイメージをしている人も多いと思うが、手先が伸縮するだけのロボットが売れている。トヨタ自動車やオムロンといった大企業が導入していて、現在の在庫は「ゼロ」。なぜ多くの企業が、単純な動きをするロボットを求めているのか。
ロボットを開発するきっかけ
土肥: それ、いいじゃないですか。釣り竿のような感じですよね。必要なときにどんどん伸ばして、必要のないときには縮める。
尹: それではダメなんですよ。釣り竿でいえば、どうしても手元の部分が残りますよね。そうすると、その部分が邪魔になる。図体の大きなロボットだけれども、使える範囲は狭いという話になりますから。
土肥: なるほど。
尹: 家電のように誰でも簡単に使えるロボットをつくりたいなあと思っていました。というのも従来のロボットは現場に導入されても、素人は使うことができませんでした。構造が複雑ですし、動かすのは難しいですし。というわけで、どのように使ったらいいのかを教えてくれる人がいます。しかし、コロは家電のようなロボットを目指してつくったわけですので、そのような人を配置する必要がありません。
土肥: それでも動かすのは難しいのでは?
尹: UFOキャッチャーができる人であれば、問題ありません。電源もコンセントに差し込むだけでOK。
土肥: そもそも、なぜロボットを開発しようと思ったのでしょうか?
尹: 日本って人口が減少していますよね。将来、労働力が不足するのは間違いない。「人口を増やしたら?」「移民を受け入れたらいいのでは?」といった声もありますが、いずれも実現することは難しい。ということであれば、「不足分をロボットに任せてみてはどうか」と考えました。でも、現場で動いているロボットをみると、柵の中に入れられている。人と一緒に働いている状況とは言えませんでした。
肘をなくして、手足が伸び縮むことができるロボットをつくれば、労働力不足を解消できるのではないか――という想いから開発がスタートしました。しかし、2008年にリーマンショックが起きたとき、どんなことを言われたと思いますか? こちらが「人手不足を解消するために、ロボットを開発している」と言ってもなかなか受け入れられなかったんですよ。なぜなら、景気が悪かったから。失業者がどんどん増えていたのに、「人手不足を解消する」といった話をしていたので、多くの人から「労働者を減らしてどうするんだ! ますます景気が悪化するじゃないか!」といった感じで非難されました。
関連記事
- 「YAMAHA」のプールが、学校でどんどん増えていったワケ
「ヤマハ発動機」といえば、多くの人が「バイクやヨットをつくっている会社でしょ」と想像するだろうが、実はプール事業も手掛けているのだ。しかも、学校用のプールはこれまで6000基以上も出荷していて、トップブランドとして君臨。なぜ同社のプールが増えていったのかというと……。 - 眼鏡がいらなくなる? 世界初の「ピンホールコンタクトレンズ」にびっくり
近視や老眼をコンタクトレンズ1枚でカバーできる「ピンホールコンタクトレンズ」をご存じだろうか。現在、臨床研究を進めていて、2017年度中の商品化を目指しているという。どのような原理でできているかというと……。 - 生産中止! 大苦戦していたブラックサンダーが、なぜ“売れ続けて”いるのか
30円のブラックサンダーを食べたことがある人も多いはず。年間1億個以上も売れているヒット商品だが、発売当初は全く売れなかった。一度は生産中止に追い込まれたのに、なぜ“国民の駄菓子”にまで成長することができたのか。 - 飛行機に“最後に乗る”のはどんな人か 羽田空港を分析
飛行機に乗るとき「できれば早く乗りたい」という人もいれば、「できれば最後に乗りたい」という人もいる。搭乗口で最後に手続きを済ませているのはどのような人なのか。羽田空港で飛行機の遅延分析をされている、JALの担当者に話を聞いたところ……。 - 日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません
「訪日客が1300万人を突破」といったニュースを目にすると、「日本は観光立国になったなあ」と思われる人もいるだろうが、本当にそうなのか。文化財を修繕する小西美術工藝社のアトキンソン社長は「日本は『観光後進国』だ」と指摘する。その意味とは……。 - あなたは大丈夫? 10〜20年後、人工知能に奪われる仕事100
人工知能によってあなたの仕事が奪われるかもしれない――。このような不安を感じている人も多いのでは。ある調査によると「労働人口の49%が人工知能などによって奪われる」という結果がでたが、この数字をどのように受け止めればいいのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.